【編集中】ライブ配信

  • 9/2/9:00-11:15

    特別企画

    座長

    高橋 健夫埼玉医科大学

    櫻井 英幸筑波大学

    • SL-1
      ハイパーサーミアガイドラインの解説:乳癌

      淡河 恵津世

      久留米大学 放射線腫瘍センター

      乳癌についてのハイパーサーミアガイドラインのCQは、乳癌局所・領域リンパ節再発に対する放射線治療にハイパーサーミアの併用は勧められるか?ということで作成した。推奨文は、再発に対する放射線治療ならび既照射後の再照射に対して、局所効果の改善を期待するためのハイパーサーミアの併用は検討してもよいとし、Votingの結果、エビデンスの強さはC(弱い)、推奨なしになった。乳癌に関しては、日本乳癌学会が監修されている乳癌診療ガイドライン(2022年度版が7月に発刊)があり、2016年より放射線療法小委員会によって多くのCQが提示されている。WEB版は6か月に1回程度の頻度で部分改定され、絶えず詳細な検証が継続的になされているが、その中にはハイパーサーミアについての記載はない。乳癌学会ガイドライン委員により厳しく検証された後、CQならびに推奨文は詳細な文言になった。乳癌診療ガイドラインはMindsにそって作成されるため、必要に応じて班員が統計学的解析を行う。ハイパーサーミアに関するデータにおいては乳癌のみの検討は困難な部分もあったため、既存の論文でまとめることとした。乳癌診療は手術方法の変遷、薬物療法の開発、サブタイプを含む病理学的情報の広がり、BRCA1/2など遺伝子情報の明確化などにより、治療方法は個別化されている。しかし、診療ガイドラインの均てん化後には局所制御率は向上しているが、一定の割合で再発は起こる。ハイパーサーミアは乳癌の再発再燃に対して補助療法として活躍することは期待できるが、学術論文からみるガイドラインにおいては、乳癌に関する多くの論文の発表年代と観察研究であるという問題により推奨グレードの判定が困難となり、エビデンスの強さも想定より低いものとなった。実臨床において再発乳癌の治療に対してのハイパーサーミア介入は個々の患者の病勢に応じて併用を検討していただきたいと考える。
    • SL-2
      ハイパーサーミアガイドラインの解説: 頭頸部癌

      光藤 健司

      横浜市立大学大学院医学研究科 顎顔面口腔機能制御学

       頭頸部は嚥下、咀嚼、発声、味覚、聴覚など日常生活を送る上で重要な機能や感覚器が集中していることから、頭頸部癌治療においては根治性とQOLの両面を考慮した治療が必要である。切除可能な頭頸部癌は手術が標準治療であり、進行頭頸部癌に対しては手術、放射線治療、薬物療法を組み合わせた集学的治療が行われている。頭頸部癌治療に対するハイパーサーミアの有用性については放射線治療や化学放射線療法にハイパーサーミアを併用することで奏効率、全生存率、無病生存率の改善を認めるとの報告が散見される。一方、頭頸部癌に対する放射線治療単独と放射線治療にハイパーサーミアを併用した治療のランダム化比較試験の報告の多くが1990年前後に行われた小規模の試験であり、治療効果や有害事象の判定が現在の基準で行われていないことから、ハイパーサーミアの有効性について強いエビデンスが存在するとは言えない。さらに、近年局所進行頭頸部癌、再発・転移頭頸部癌に対する多剤併用療法、分子標的治療薬、免疫チェックポイント阻害薬を用いた薬物療法が行われるようになったが、これらの薬物療法とハイパーサーミアとの臨床研究はない。
      本学会ガイドライン作成委員会では各領域でclinical question(CQ)を設定し、論文の検索、論文の内容の吟味・エビデンスレベルの確認、CQ作成・推奨グレードの決定、関連学会へCQに対するコメントを依頼し、現在診療ガイドラインは完成に近づいている。本シンポジウムでは頭頸部癌に対するハイパーサーミアの診療ガイドライン作成の概要について報告する。
    • SL-3
      ハイパーサーミアガイドラインの解説:子宮頸癌

      播磨 洋子

      関西医科大学総合医療センター放射線科

      放射線治療(RT)単独群とRT+ハイパーサーミア(HT)群について6つのランダム化比較試験が報告された。CochraneレビューではRT+HT群の非完全奏功になるリスクはRT群の0.56倍、局所再発リスクは0.48倍、全生存率を悪化させるリスクは0.67倍で、HTの有効性を示した。メタアナリシスではRT+HT群はRT群に比べて完全奏効率は22%、長期局所制御率は23%高かったが、HT併用で急性期、晩期有害事象の増加はなかった。RT+HTは完全奏効率と生存率を向上させる有効で安全な治療法であるが、20年前の報告が多いことから「ハイパーサーミアの併用は治療効果の改善が期待でき考慮する。エビデンスの強さをC、弱く推奨」とした。
      同時化学放射線療法(CCRT) +HTについての第Ⅰ/Ⅱ相試験では完全奏効率、5年全生存率、5年無再発生存率は90%、66.1%、57.5%であった。CCRT群とCCRT+HT群を比較した101例(Ⅲ~Ⅳ期73.3%)の多施設ランダム化比較試験では、CCRT+HT群の完全奏効率、5年全生存率、5年無病生存率が88%、77.8%、70.8%で、CCRT群は77.6%、64.8%、60.6%であったので、CCRT+HT群の治療効果は良好であったが、生存率に有意差を認めなかった。CCRT群(191例)とCCRT+HT群(182例)の計373例(Ⅲ期~Ⅳ期36.5%)についての単施設ランダム化比較試験では、5年全生存率はCCRT群で72.3%、CCRT+HT群81.9%で有意に良好であった(P=0.04)。両試験ともにHT併用で急性期、晩期有害事象の増加を認めなかった。したがってCCRT+HTは有望な治療法になりうるが、ランダム化比較試験がまだ2編と少ない点から「治療効果の改善が期待できハイパーサーミアの併用を提案する。エビデンスの強さをC、弱く推奨」とした。

    • SL-4
      ハイパーサーミアガイドラインの解説:軟部肉腫

      相羽 久輝

      名古屋市立大学 整形外科

      悪性軟部肉腫は全身の様々な部分に発生し、約60%は四肢に発生すると報告されいる。大きさと切除 縁が術後の再発危険因子であり、腫瘍反応層外で切除することが適切な手術方法とされているが、補助 療法として、化学療法に対する感受性が高い組織型で、5cm を超え、深部発生の悪性軟部腫瘍に対して、化学療法は推奨されている。また、切除断端、腫瘍占拠部位、腫瘍径などの予後因子と、副作用な どを慎重に検討した上で、放射線治療も推奨されている。 欧米においては、アンソラサイクリン系の化学療法とハイパーサーミアを併用し、周術期化学療法を 行うことの有用性が一つのランダム化比較試験で証明されている(EORTC 62691-ESHO 95, EL-1b)。こ の研究では周術期に計8 コースのエトポシド+イホスファミド+アドリアマイシンによる化学療法に対し てハイパーサーミアを加えることによる上乗せ効果を解析し、5 年生存率はハイパーサーミアを加える ことにより、化学療法群に比べ51.3%から62.7%に上昇し、無局所再発生存期間の中央値も2.4 年から 5.6 年に延長されたことが報告されている。 本邦ではランダム化比較試験は実施されていないが、悪性軟部肉腫の術前療法として、ハイパーサー ミア併用化学放射線療法が単施設にて行われており、この研究では手術単独群に比べ、ハイパーサーミ ア併用化学放射線療法は局所制御率が良好であったと報告されている。また、化学療法や放射線治療単 独に対する優越性は検証されていないが、切除縁が不十分な場合でも局所再発率が低いことが報告されており、患肢温存を目指した縮小手術が可能であることが示唆されている。 以上のように、本邦では実施可能な施設が少なく、治療プロトコールも異なることから弱い推奨にな るが、“局所進行高悪性度非円形軟部肉腫に対して補助療法との併用でハイパーサーミアの実施を提案 する(エビデンスの強さ:B(中)”と推奨文に記載を行った。
    • SL-5
      ハイパーサーミアガイドラインの解説:膀胱癌

      石川 仁

      量子科学技術研究開発機構QST病院

      (目的)本学会の診療ガイドラインを作成するにあたり、膀胱癌に対するハイパーサーミア併用の有効性について検討した。
      (方法)臨床的特徴、治療方針の違いから筋層非浸潤性膀胱癌と筋層浸潤性膀胱癌に分けてシステマティックレビューを行い、推奨文、推奨度、および解説文案を作成し、泌尿器科学会からの推薦委員に提出後、専門的な見地からの評価と意見を踏まえて最終的なガイドラインを作成した。
      (結果)筋層非浸潤性膀胱癌に対する現在の標準的な治療である膀胱内薬物注入療法へのハイパーサーミア併用は、4つのランダム化試験のうち3つの試験と1つのシステマティックレビューで再発率の有意な低下が示された。最終的に筋層非浸潤性膀胱癌に対する再発予防治療として膀胱内薬物注入療法が行われる場合には、ハイパーサーミアを併用することを弱く推奨とした。筋層浸潤性膀胱癌については、放射線単独療法に対する治療奏効率を指標とした上乗せ効果がランダム化試験で示されていた。また、現在の標準的な膀胱温存療法である膀胱腫瘍切除術後の同時化学放射線療法へのハイパーサーミアの上乗せ効果に関する比較試験は存在しないが、同一施設でのヒストリカルコントロールと比較した研究では、局所制御や生存期間を指標とした場合にハイパーサーミアの併用が有効であることが示唆されていたため、ハイパーサーミアの併用を弱く推奨と判断した。一方、全体的には研究の数が限られていること、比較試験での標準治療が現状とは必ずしも一致していないことから、ハイパーサーミアの上乗せ効果を示す更なる比較試験が必要であると考えられた。
      (結語)膀胱癌に対するハイパーサーミアの併用は治療効果を増強できる可能性が示唆され、筋層非浸潤性膀胱癌、筋層浸潤性膀胱癌ともにハイパーサーミアの併用を“弱く推奨する”と判断した。
    • SL-6
      ハイパーサーミアガイドラインの解説: 膵癌

      石川 剛

      京都府立医科大学 消化器内科

      診療ガイドライン(以下GL)はエビデンスのシステマティックレビューを基に作成されるが,膵癌領域におけるハイパーサーミア(HT)の報告は症例数の少ない後方視的研究が多く,GL作成においてはこうした限られた情報をデータベースとして利用した.クリニカルクエスチョン(CQ)は「膵癌に対してHTは推奨されるか?」を設定し,回答は膵癌領域2名の委員でエビデンスレベルおよび推奨グレードについてドラフト版を作成し,委員会全体で相互査読して検討を加え,さらに外部レビューを依頼して最終版とした.
      切除不能膵癌の臨床試験は,治療法や予後の違いから,最近では局所進行膵癌と転移性膵癌を分けて試験が行われるが,今回GL作成において参考とした試験はこれらを一括して扱っており,HTに併用される治療も様々であった.サンプルサイズの少ない試験が多いものの,結果には一貫性があり,いずれもHTを集学的治療として組み入れることの有効性を示すものであった.しかし,ランダム化比較試験(RCT)での検証は行われておらず,エビデンスの確実性は不十分であり,エビデンスの強さは「D(とても弱い)」と判定した.有効性に関するエビデンスは不十分であるが,重篤な有害事象の報告はなく, 安全性については信頼性を有する.予期される利益と害,エビデンスの確実性,コストなども考慮し,推奨度については「治療経験があり十分な精度管理がなされた施設においては標準治療にHTを併用することを提案することができる」と判断し「弱く推奨」とした.
      現在,欧州で2つのRCTが実施されており,その結果が待たれる.膵癌診療は薬物療法・放射線療法ともに大きく進歩しており,現在の標準治療にHTを併用することの意義について改めて検証することが求められる.さらに,疼痛緩和などHTが膵癌患者のQOLに及ぼす影響についても,臨床試験において適切に評価されるべき課題である.
    • SL-7
      ハイパーサーミアガイドラインの解説: その他

      大栗 隆行

      産業医科大学病院 放射線治療科

       ハイパーサーミアガイドラインでクリニカルクエッションとして取り上げた悪性黒色腫、直腸癌、食道癌および非小細胞肺癌に関して、設定されたエビデンスの強さや推奨度の理由も含め解説する。各がん種のエビデンスの要点を以下に示す。
      悪性黒色腫は、再発・転移性の表在病変に対する放射線治療においてハイパーサーミアを併用することで腫瘍縮小効果や局所制御率の改善が得られることが、1つの古いランダム化比較試験(RCT)において示されている。しかしながら、手術療法との比較を行ったデータはなく、また現在の免疫チェックポイント阻害薬や分子標的治療薬を含めた集学的治療の中で、ハイパーサーミアによる放射線治療の局所効果の改善で得られる臨床的メリットは明らかでない点を考慮した。
      局所進行・再発直腸癌は、放射線単独療法に比べハイパーサーミアを併用することで、局所効果の改善が得られることが、複数のRCTに基づくエビデンスで示されている。また、化学放射線療法とハイパーサーミアの併用に関してはRCTによる検討はないものの、複数の前向き第二相試験の結果が示されている。
      食道癌は、術前化学放射線療法とハイパーサーミアの併用に関してはRCTがありpCR率や生存期間の改善が示されている。しかしながら、RCTで用いられた食道腔内加温法は、現在は本邦で使用可能な施設がなく外部加温法が主流となっている。外部加温法を用いたRCTは報告されていないが、前向き第II相試験や後ろ向き研究の結果が認められる。
      局所進行非小細胞肺癌に対する放射線単独療法あるいは同時化学放射線療法とハイパーサーミアの併用により生存率の改善を示したエビデンスレベルの高い報告はない。IV期の非小細胞肺癌では、2次治療以降の細胞障害性抗癌剤にハイパーサーミアを併用する前向き第II相試験や後ろ向き研究が抽出された。
    • SL-8
      ハイパーサーミアガイドラインの解説:腹膜播種

      鍛 利幸

      岸和田徳洲会病院

      大腸癌腹膜播種に対して可能な限りの減量手術と腹腔内温熱化学療法との併用(CRS+HIPEC)は限られた症例で完全切除が得られる場合に行うことを提案する(エビデンスレベル:B、弱く推奨)。腹膜偽粘液腫に対してCRS+HIPECは組織型や腫瘍量に関わらず行うことを考慮する(エビデンスレベル:C、弱く推奨)。
      大腸癌腹膜播種に対する推奨の程度は海外と国内で異なる。これまで多くの臨床試験がCRS+HIPECの予後改善効果を報告してきた。最近、大腸癌腹膜播種に対するCRS+HIPECに関して、3つの重要な論文が発表された。CRS+HIPECにおけるHIPECの効果を検証したPRODIGE7、大腸癌R0手術が行われた症例のうち再発高危険群に対するsecond-look surgery + HIPECの効果を検証したPROPHYLOCHIP、同様に予防的HIPECの効果を検証したCOLOPECである。大腸癌腹膜播種におけるHIPEC単独の効果を明らかにすることはできなかったが、HIPECの適応や方法についてより理解と議論が深まったといえる。
      腹膜偽粘液腫はまれな疾患であり、ランダム化比較試験を行うことが困難である。従って、エビデンスレベルは低く、一般的なガイドラインは作成されていないが、海外の学会ではCRS+HIPECが標準治療として推奨されている。最近の後ろ向きの比較研究では、全生存はHR=0.65でHIPECの予後改善効果が示された。そのほか、卵巣癌でも無作為比較試験でHIPECの予後改善効果が報告され、海外のガイドラインに記載されるようになった。
    • SL-9
      ガイドライン作成に当たってこうしておけばよかったと思うこと

      黒﨑 弘正

      江戸川病院

      ハイパーサーミアガイドラインを作るにあたって主に文章校正を担当した経験から、次回の作成に向けての反省点を述べる。まず初めに用語の問題である。現在本学会では用語集がないため、主に日本放射線腫瘍学会から出ている用語集を用いた。必要に応じて日本癌治療学会の用語集などを参照したが、日本癌治療学会の用語集も2013年が最終版であり、近年の急速ながん治療発展についていけていない現状がある。本学会のマンパワーを考えると本学会独自の用語集を作るかどうかは正直困難だと思われるので、どのようにするか前もって決めておくことが大切であると考えられた。次に言葉の使い方を前もって決めておく(“温熱併用放射線治療”なのか、それとも“ハイパーサーミア併用放射線治療”なのか)ことも大切と考えられた。また、略語の使い方についても統一を図ることも大切である。今回のガイドラインではCR(complete response)はすべて完全奏効に統一させていただいた。これは疾患によってはCRは化学放射線療法chemo-radiotherapyともとれるからである。最後に文献の記載方法などももう少しはっきりとこの形で行うと決めたほうが良かったとも感じている。以上のことからガイドラインの第2版を作成する際には前もって見本となるものを配って、それに沿ってガイドライン委員会のメンバーに記載してもらうのが良いと考えられる。
  • 9/2/11:20-12:40

    シンポジウム1

    座長

    齋藤 淳一富山大学

    • S1-1
      ハイパーサーミアはオプジーボの効果を増強するか ?!

      赤木 純児

      くまもと免疫統合医療クリニック

      オプジーボの臨床効果はあまり高くなく、通常20〜30%と言われています。現在、この臨床効果を増強する方法が各方面でさまざまに研究されています。オプジーボの臨床効果に関与する因子を理解するためには、がん免疫サイクルの理解が重要になってきます。がん免疫サイクルは、次の7つのステップから成っています、①癌細胞の破壊、②樹状細胞によるがん抗原の捕捉、③樹状細胞によるT細胞の教育、④教育されたT細胞 (キラーT細胞)が血管内を移動、⑤キラーT細胞の腫瘍内への浸潤、⑥キラーT細胞によるがん細胞の認識、⑦がん細胞の破壊。オプジーボは⑦のステップで働きますが、オプジーボが正常に働くためには、元気なキラーT細胞ががん細胞の周辺に集積していることが重要になってきます。キラーT細胞(CD27-CD57+CD8+ T cells)は初期分化型(CD27+CD57-CD8+ T cells)から中間分化型(CD27+CD57+CD8+ T cells)を経て誘導されます。キラーT細胞と初期分化型のT細胞とは有意な逆相関関係にあり、キラーT細胞/初期分化型T細胞(CD27 ratio)の比はキラーT細胞の誘導効率を示しており、CD27 ratio > 1.45ではキラーT細胞が有効に誘導されており、CD27 ratio < 1.45ではキラーT細胞の誘導が阻害されていること、当然のことながら、CD27 ratio > 1.45の症例は予後が良好であることを最近報告しました。さらに、我々はハイパーサーミアがCD27 ratioを増加させて、キラーT細胞の分化誘導を促進することを見出しました。ハイパーサーミアは、②のステップで働く樹状細胞も活性化しますので、がん免疫サイクルの①から③のステップを活性化すると考えられます。次に、④と⑤のステップで教育されたキラーT細胞は血流に乗ってがん細胞に運ばれていくわけですが、ハイパーサーミアはがん局所の血流を増加させることによってキラーT細胞ががん細胞周辺に浸潤するのを増強します(がん免疫サイクルの④と⑤を活性化)。このように、ハイパーサーミアはがん免疫サイクルの①から⑤のステップを活性化して元気なキラーT細胞をがん細胞周辺に誘導することで、オプジーボの効果を増強する可能性が考えられます。

    • S1-2
      アブスコパル効果研究の現状と放射線治療や温熱療法への応用の可能性について

      香崎 正宙

      産業医科大学、産業生態科学研究所

      これまで放射線療法は、化学(薬物)療法、手術療法と併せて三大がん治療法として、がん治療法として用いられてきた。また、放射線治療や化学療法の上乗せ効果を期待して、電磁波を用いて病巣を加温する温熱療法が実施されている。そんな中、2018年の本庶博士とアリソン博士のノーベル賞の受賞を受けて、第四のがん治療法として、がん免疫チェックポイント阻害療法が近年著しく注目を集めている。これまでも、免疫を利用したがん治療法として、サイトカイン療法、養子免疫療法、樹状細胞療法などが開発されてきたが、免疫抑制など複雑な免疫システムの全容がまだ明らかになっていないために、これらの免疫療法は、標準治療ではなく補助療法として実施されている状況である。
      放射線によって遠位腫瘍の退縮が誘導される生物学的に興味深いアブスコパル効果は、70年ほど前から報告されているが、とても希少な現象であったことから長年ほとんど注目されなかった。しかし、がん免疫チェックポイント阻害療法による免疫系の活性化によって、アブスコパル効果の頻度が向上する臨床報告や(Postow et al., N Engl J Med, 2012)、マウス実験における詳細な分子メカニズムの解明によって(Vanpouille-Box et al., Nat Commun, 2017)、この十数年間でアブスコパル効果を利用したがん治療に関する治験が精力的に実施されている(Ngwa et al., Nat Rev Cancer, 2018)。本発表では、従来の放射線治療や温熱療法に加えて、がん免疫チェックポイント阻害療法を使ってアブスコパル効果を利用した最新の知見を紹介しながら、将来的な応用や実用化の可能性について展望する。
    • S1-3
      磁性ナノ粒子と交流磁場を用いたハイパーサーミアの泌尿器系腫瘍に対する研究成果と今後の展望

      河合 憲康

      名古屋市立大学大学院医学研究科 腎・泌尿器科学分野

       癌温熱治療(ハイパーサーミア)はエネルギー源やエネルギー照射の方法の違いにより、ablation, cryotherapy, local hyperthermia, regional hyperthermia whole-body hyperthermiaに分類できる。私たちは小林猛先生(名古屋大学名誉教授・本会名誉会員)の指導のもと、Fe3O4で表記される磁性ナノ粒子(Magnetic Nano particle:MNP)がN極S極が交互に入れ替わる交流磁場の照射により熱エネルギー生じることを利用した癌温熱治療(Magnetic Hyperthermia:MH)の泌尿器系腫瘍に対する治療効果につき研究を続けてきた。MHは腫瘍組織のみを選択的に加温できるため、非常に高いがん治療効果が得られる。
      最初に前立腺癌ラット皮下移植モデルを用いて、MHが前立腺癌の増殖を抑制することを示した。次にヒト前立腺癌のヌードマウス皮下移植モデルを用いて、MHが前立腺癌を完全退縮させることを示した。実臨床でホルモン治療に抵抗性を示す去勢抵抗性前立腺癌への治療効果も期待できる結果であった。前立腺癌では骨転移が高頻度に認められるため、骨転移治療の可能性について検討した。ラット骨浸潤モデルを用いMHが前立腺癌の骨浸潤を抑制することを示した。
      膀胱癌は粘膜のみに癌が認められる筋層非浸潤性膀胱癌が進行すると筋層浸潤性膀胱癌となる。筋層非浸潤性膀胱癌の標準治療法は内視鏡下膀胱腫瘍切除術とその後のBCG膀注療法である。しかし、この方法も完全ではない。そこでMNPの膀注によるMHの可能性について研究を開始した。その経過についても報告する。
      MHの究極も目標は検査と治療を当時に行うTheranosticsである。このためにはNMPを経静脈的に投与できること、そして、そのNMPが標的指向性をもつことが必要である。これは研究半ばであり、今後の展望として報告する。
    • S1-4
      前立腺癌に対するHIFUをもちいたWhole-Gland Therapy: 治療成績に影響する因子とは?

      小路 直

      東海大学医学部外科学系腎泌尿器科学

      【目的】前立腺癌に対する高密度焦点式超音波療法(HIFU)をもちいたWhole-Gland Therapy (WGT)の12年間の臨床成績を解析した。【方法】対象は、血清PSA値が20ng/mL以下の限局性前立腺癌。Sonablate®500を用いて治療し、患者背景、治療技術、および臨床成績について検討した。【結果】対象は428例。年齢および血清PSA値の中央値は、67歳および7.61ng/mLであった。D’Amicoリスク分類では、低、中、および高リスク群は、102例、240例、および86例であった。低、中、および高リスク群における12年間の生化学的非再発生存率(Phoenix ASTRO definition)は、80.4%、65.6%、および61.6%であった。多重ロジスティック回帰分析では、高リスク群における術前内分泌療法(OR, 0.225; p = 0.015)、低リスク群(OR 0.178; p = 0.030)、中リスク群(OR, 0.291; p < 0.0001)、および高リスク群(OR, 0.316; p = 0.049)における術中前立腺腫大を抑制する“術中前立腺圧迫法”実施は、生化学的再発の抑制因子であった。低リスク群(88.2% vs. 59.3%; p = 0.002)、中リスク群(77.2% vs. 49.5%; p < 0.0001)、および高リスク群(67.1% vs. 48.9%; p = 0.006)における生化学的非再発生存率、および術後造影MRIにおける血流消失領域の体積(p
  • 9/2/13:30-13:50

    学会賞受賞講演

    座長

    河合 憲康名古屋市立大学

    • BS-1
      エビデンスを求めて - 学会のDXと患者レジストリ -

      浅尾 高行

      群馬大学副学長(ICTデータサイエンス担当)

      群馬大学第一外科(現、総合外科学)では1991年以来一貫して局所直腸癌に対して行なってきた放射線治療にハイパーサーミアを2002年に付加して以来、Phase2を繰り返しながら副作用の軽減と効果の増強を図ってきた。これらの有効性を報告するなかで、医療機器の評価でもあるハイパーサーミアのエビデンスを明らかとする難しさを実感してきた。ハイパーサーミアの上乗せ効果については多くの論文がすでにPublishされており、新たな臨床試験は倫理的にもコストの面でも現実的ではないことが認識されていたが、全国的にも2017年にはGPSP省令の改正「製造販売後データベース調査」が位置づけられ、個人的にはAMEDの「レジストリーの共通検討課題に関する研究班」に参加させていただいたのを契機に、学会がレジストリを構築する意義を改めて認識するに至った。このころ、研修医の時代に趣味として始めたプログラミングを改めて学び直す機会に恵まれ、2020年には大学のICTとDXの担当責任者になったのを契機に、従来のシステム開発とは全く異なる方法で「G-Registry」を完成させた。今回、学会事業に向けた患者レジストリの構築に採用され、さらに、大学発のOnline会議システム「G-Conference」を本学会の運営にご利用いただき、学会に貢献できたことは幸いです。今日まで多大なるご指導とご協力をいただいてきた、教室や学会の先生方に感謝申し上げながら、ハイパーサーミアのエビデンスを求めてきた、これまでとこれからの展開をご報告いたします。
  • 9/2/13:50-14:10

    研究奨励賞受賞研究報告

    座長

    河合 憲康名古屋市立大学

    • RE-1
      温熱ストレスに対する液-液相分離反応に関する研究

      森 英一朗

      奈良県立医科大学

      細胞に熱などのストレスがかかった際に形成されるRNA 顆粒は、膜によって囲まれていない細胞内小 器官(非膜オルガネラ)であり、非常に動的である。このように、タンパク質や核酸などの生体分子が 動的な集合状態を形成することを「生物学的相分離」と呼び、2010 年代に活発に研究が進められた。相 分離を駆動する因子として、アミノ酸の組成からlow-complexity(LC)ドメイン(低複雑性配列)が知 られている。もしくは、定まった構造を持たないことから天然変性配列とも呼ばれている。また、相分 離を制御する機構として、翻訳後修飾や分子シャペロンが知られているが、相分離した状態をどのよう に認識しているのかについては、詳細はまだ明らかになっていない。我々は、様々な分子間相互作用を 評価していく過程で、相分離を駆動するLC ドメインによるcross-βポリマー構造を認識する分子を同 定した。本講演では、新規に同定した相分離駆動分子基盤の認識機構の構造学的な解析結果を紹介す る。
  • 9/2/14:15-14:55

    優秀論文賞発表

    座長

    髙橋 昭久群馬大学

    • BR-1
      共振器型マイクロ波照射装置の開発と培養癌細胞に対するマイクロ波の電場と磁場の影響

      浅野 麻実子

      マイクロ波は,電場と磁場によって物質を加熱する.この時,物質へのマイクロ波の吸収や加熱の度 合いは,その成分や組成に影響される.細胞は,多種類の物質が様々な組成で混合した集合体であるこ とから,マイクロ波加熱のメカニズムを細胞内で理解することは極めて難しい.したがって,加熱機構 を考慮した上で,マイクロ波照射が細胞に与える影響を解析することは重要である.我々はこれまで に,マイクロ波照射が複数の培養癌細胞の細胞死を誘導することを明らかにし,その細胞死メカニズム を解析した.本研究では,マイクロ波の電場と磁場のどちらが培養癌細胞の死滅に強く影響を及ぼすか を調べた.まず初めに,共振器型マイクロ波照射装置を開発した.本装置は,1 つのシャーレ内に照射 される電場及び磁場成分の割合が異なっている.次に本装置を用いて,ヒト膵臓癌細胞株Panc-1 がマイ クロ波の電場及び磁場成分のどちらの影響で死滅するのかを確認した.その結果,電界強度が最大の位 置で細胞死が誘導されたことから,誘電損失が細胞死に影響を与えると推測した.一方,磁場強度が最 大の位置では細胞死は誘導されず,磁場は細胞死に影響を与えなかった.
    • BR-2
      超音波画像による非侵襲温度計測のディープラーニングによるアプローチ

      井関 祐也

      八戸工業高等専門学校

      著者らはこれまで超音波画像を用いた非侵襲温度測定法を提案してきた。この手法は、解析者が多岐にわた る画像解析パラメータを経験的に調整しながら最適な組み合わせを見つけ出す必要があった。また温度校正の ための熱定数ktissue は組織の種類によって変化するが、温度計測アルゴリズムの特性上、画像解析パラメータ によっても変化する。したがって組織毎に多様な画像解析条件下で熱定数ktissue を把握しておく必要があった。 これらの問題点を克服すべく、本論文ではディープラーニングによる温度計測手法を提案した。すなわち本温 度計測手法の解決すべき問題点である(1)画像解析パラメータの自動推定、(2)熱定数ktissue の自動推定を可 能とするシステムの構築を行う。本ディープラーニング手法は、3 つのステップに大別される。まず、Step I では加温前後の超音波画像を畳込みニューラルネットワークに入力し、最適な画像解析パラメータを推定する。 Step II では、Step I によって推定された画像解析パラメータと超音波画像を用いて、従来の画像解析プログ ラムを実施し、超音波画像の画像変位分布を得る。最後にStep III では、Step I、Step II によって推定され た画像解析パラメータおよび画像変位分布を多層パーセプトロンに入力し、熱定数ktissue の推定および温度上 昇を推定する。以上のようにディープラーニングによって一連の温度分布計測を実施する。 本論文では、まず畳込みニューラルネットワークに超音波画像を入力するための3 種類の画像統合方法を提 案し、これらの結果を比較した。次に、隠れ層とニューロンの数を変え、多層パーセプトロンの最適な構造を 決定し最後に、上記の手順で温度分布を取得した。これらの結果から、提案手法の有用性を確認した。
  • 9/2/15:00-16:00

    教育講演

    座長

    藤内 祝明海大学

    • EL-1
      生物学的視点からみたハイパーサーミア

      髙橋 昭久

      群馬大学重粒子線医学研究センター

      本教育講演では,様々な分子,細胞,組織レベルの生物学的視点から,ハイパーサーミアが単独でも集学的治療でも,正常細胞にあまり損傷を与えずにがん細胞のみ選択的に殺細胞効果を高める利点があり,非常に理にかなった治療法と言えることについて紹介する.
    • EL-2
      理工学的視点からみたハイパーサーミア

      黒田 輝

      東海大学情報理工学部情報科学科

      ハイパーサーミアには主として三つの理工学的視点がある.第一は加温である.加温は主に電磁波や超音波といった波動現象が使われるが,人体組織は非均質性・異方性・非線形性・分散性の媒体である.しかもこれらの性質が拍動・呼吸・蠕動などにより動的に変化する.加えて血流量の温度感受性により熱輸送率が変化する.集束超音波や刺入型レーザー・マイクロ波による加温では腫瘍に選択的にエネルギーを投与できる.他方,RF 誘電加温では体内での電磁界の波長がメートルのオーダーに及ぶため腫瘍を含む広い組織範囲を加温するが,腫瘍における血流の熱輸送率の温度上昇に伴う増強が,正常組織に比べ低いことで加温の選択性を獲得している.このことがRF誘電加温による治療最適化の難しさに繋がっている.第二は温度計測である.エネルギー投与による温度分布の時空間的変化を画像計測する必要がある.このためMRIや超音波による非侵襲画像計測技術が不可欠である.現在実用レベルで温度計測が可能なのはMRIである.高含水組織では水分子のプロトンの磁気共鳴周波数,脂肪組織ではメチレンやメチル基プロトンの緩和時間によって温度計測が可能である.ただしRF誘電加温の場合は直径の大きな加温電極がMRIの勾配磁場やRF磁場に著しい影響を与えるため,MRI装置と加温装置の融合は困難であり,加温途中に患者をMRIに移動させて撮像する必要がある.第三は治療制御である.治療計画には患者個々のCTあるいはMRIの画像から構築した数値人体モデルに基づく有限要素法や有限差分時間領域法による精密な数値シミュレーションが有効である.RF誘電加温の場合には治療中にモニタされる電力やインピーダンスに基づいてシミュレーションを更新し,治療条件を動的に制御することが望ましい.さらに上述の術中温度計測をシミュレーションの結果の検証に利用することも有効である.
  • 9/2/16:00-17:30

    ワークショップ1

    座長

    大田 真戸畑共立病院

    • W1-1
      当院におけるハイパーサーミア導入から現在の現状について

      濱田 祐己

      JR広島病院

      【はじめに】
      当院は、2016年2月よりハイパーサーミア(以下HT)を導入し、現在までに様々な進行・再発の癌患者を中心に385名の治療を行ってきた。総治療回数6119回。HT在籍スタッフは、医師2名、看護師3名、臨床工学技士7名である。HT業務は、医師1名、看護師1名、臨床工学技士1名の体制で行っており、導入から現状までの取り組みを報告する。

      【導入から現状までの取り組み】
      HT導入時点より、ローテンションで他業務と兼任という形でスタートし、知識面、教育面、技術面、全てにおいて手探りな状況下で開始された。そのため、スタッフの経験や勘などに左右されており治療の標準化が図れていない現状であった。
      そこで現在までに当院が行ってきた取り組みをここに報告する。
      ① 照射記録、医師指示書
      ② 照射部位に対して位置決め
      ③ 熱間、疼痛時への対策の統一
      ④ 開始から出力の上げ方
      ⑤ スタッフ間の情報共有
      ⑥ その他

      【成果】
      これらの取り組みより、加温技術の安定、位置決めの統一化、HTに関する知識力の向上、熱間や疼痛時対応面などの個々の差が縮小された。つまり、安定したHTを提供できる、標準化治療へ切り替わることに繋がっていると自負する。
      【課題と展望】
      今後は、患者さんの同意が得れれば、初回治療時において測温(直腸温、食道温)を行い、さらなる治療効果へ繋げたい。今後の展望として、リアルタイムでの腫瘍細胞温度分布(マッピング)技術などの実現化を望む。

    • W1-2
      手術を希望しない乳癌に対し、温熱療法導入が奏功した右乳癌の1症例報告と当院での温熱治療の実績と今後の課題について

      寺口 博也

      金澤なかでクリニック

      【諸言】
      日本人女性の乳癌罹患数は年々増加しており、特に40歳代から50歳代に診断されることが多い。また、女性の癌による死亡数で最も多いのが乳癌である。治療は手術にて切除をすることが一般的だが、手術を希望されない方も少なくない。今回、手術を希望されなかったHER2陽性右乳癌を呈する患者に対して患者希望により、抗HER2療法+温熱療法(ハイパーサーミア:以下HT)を導入し、良好な治療効果を示した症例を経験したので報告する。

      【症例】
      62歳、女性。
      X-1年 近医にて右乳癌を指摘され、石川県立中央病院乳腺・内分泌外科に紹介受診された。
      マンモグラフィー:右M/I 辺縁微細鋸歯状の腫瘤 カテゴリー4
      超音波検査:右AC 29×21㎜大 辺縁明瞭粗造の不整形腫瘤
      針生検:浸潤性乳管癌 ER(+)PgR(+)HER2(3+)
      CT:右ACに腫瘤。右腋窩リンパ節に小さいが転移を疑うものあり
      CEA、CA15-3はともに基準値内。

      右乳癌cT2N0M0stageIIAの診断で、抗HER2療法+化学療法を行った後に手術の方針となったが、化学療法・手術ともに拒否の意思が強く、抗HER2療法+温熱療法を希望され温熱療法目的に当院紹介となった。

      【臨床経過】
      抗HER2療法を行いつつ、右乳房に熱量180-230W(測温時:約40-41.5℃)治療時間40分を週1回より開始しHT 3クール(6か月間)施行した。
      HT治療後、超音波検査では、腫瘍サイズが長径で29mmから10mmと66%減少した。
      【まとめ】
      右乳癌に対して、抗HER2療法+温熱療法の併用は、超音波検査にて腫瘍消失には至らなかったが、著明な縮小効果を示したことから、手術を希望されない乳癌に対し、温熱療法は有効な治療になりうる可能性がある。今後も治療支援と経過観察を継続する。

    • W1-3
      当院の深在性腫瘍に対する加温要点と工夫

      真鍋 麻実

      原三信病院

      【緒言】
      温熱治療は放射線療法や化学療法との併用により相乗的な効果が期待される癌治療の一つである。適応疾患も幅広く深在腫瘍から浅在性腫瘍まで多岐に渡る。抗腫瘍効果を高めるためには極力加温温度を上げる事が望ましいが、熱傷など副作用のリスクも高めることになる。多くの患者は併用治療に伴う全身状態の低下を伴っており、患者のQOLに悪影響を与えないことも重要である。
      【現状】現在治療中の患者は特に肺癌と膵癌が全体の半数を占めている。深在部腫瘍の治療において加温効率を高めることに主眼を置くと疼痛・熱傷を生じる場合が多く工夫が必要である。まず患者の体位は腹臥位が第一選択となる。電極の圧迫が不十分な状態や、保持が難しい体位の状態であれば疼痛が生じ加温効率が低下するため、患者ごとの治療部位・電極の高さを記載した表を提載し患者体位の再現性を高めるようにしている。また情報共有として共通フォーマットを使い治療記録を行っている。疼通が生じる場合は、治療開始前に疼痛好発部位に紙テープやサランラップ(ポリ塩化ビニリデン)で保護を行っている。治療前の全身状態の把握は副作用出現を予期するために重要であり、治療の直前直後でバイタルチェックし前回治療時との変動が大きい場合など全身状態の変化が疑われる場合には医師の診察を受けて可否を決めている。治療中の患者観察が必須だが当院では機器操作を行う臨床工学技士に加え専属の看護師が常駐する体制により温熱治療開始以後、アクシデントが起きていない結果につながっている。
      【課題点】浅在性腫瘍に対して体表面のみ温度センサーを用いて実際の加温温度を把握しながら出力を上げているが深在性腫瘍に対しては測定行為が侵襲的になるため当院では実施していない。現在は全身状態と疼痛の程度を観察しながら可能な範囲で出力を上げている。導入当初は機械操作を行える技士1名であったが現在は5名に増え、情報共有が難しくなった。これに対しては毎月1回カンファレンスを設けた。
      【結語】
      ハイパーサーミア業務については明確な指針がなく、治療の質の向上や安全の確保といった点で発展途上である。特に深部加温の温度測定は施行すべきであり、患者の侵襲を極力少なくするような工夫を治療ルーチンに加えたい。
    • W1-4
      NRSからみた熱感発生時の対応要点

      大田 真

      社会医療法人共愛会 戸畑共立病院

      【背景】
      本治療は皮膚表面へ局所的に電磁波が帯電することで熱感が出現する.熱感の対応を誤ると疼痛や水泡形成、脂肪硬結といった有害事象に繋がることから,治療時には注意が必要とされるが,その効果に対する基準はなく,担当者の主観で行われている.
      【目的】
      当院で実施している熱感対応について,効果を後方視的に調査し,考察することで,熱感対応を明確化し,治療の安全と質向上に努める.
      【方法】
      2021年12月~2022年3月までに実施した深在性治療の全326例を対象とした.調査項目として,①加温出力調整,②医療用ゼリーの塗布,③人体-電極の圧着調整,④加温中心部の微修正の4項目に対し,痛みの強さをNRS(Numerical Rating Scale)を用い定量的に評価した.
      【結果】
      熱感対応直後のNRS(mean)は①1.4±0.8,②1.3±1.1,③5.9±1.4,④4.6±1.8.対応5分後では①1.9±1.2,②4.9±2.3,③3.1±1.4,④2.2±0.9.①は持続的に低値を示しており最も効果的であった.②は直後で低値となるも5分後には再増大する結果であった.③,④は対応直後の変化はなく,対応5分後で緩徐に低くなる傾向にあった.
      【考察】
      加温出力の調整は,即効性と持続性の双方で効果的であり,手技も容易なことから,医療者の経験年数や技量を問わず,熱感対応の第一選択になると考えられた.しかし,出力を低くすることで加温効果も低減するため,治療担当者は,症例の病態や治療目的を理解する必要があると考えられた.医療用ゼリーの塗布は,効果に即効性がある一方,持続性に乏しいことから,熱感時の応急処置として有用であるが,根本原因の解消には繋がらない.
      電極の圧着調整、加温中心部の微修正は,即効性は低いが,その後の効果は期待されるため,医療用ゼリーの塗布と併用し対応することが効果的であると考えられた.
      【結語】
      今回,深在性加温時における熱感対応について考察した.熱感対応では,その効果について,即効性と持続性の観点から特性を理解した上で,その場の状況に即した対応をとることが重要である.
    • W1-5
      疼痛のため難渋した症例への取り組み

      古木 千愛

      熊本セントラル病院

      【背景・目的】50代、女性 右上顎洞腺様嚢胞癌術後 両側多発性肺転移
      身長162㎝ 体重65.7Kg BMI 25 加温ターゲットは両側多発性肺転移。体位は腹臥位
      A側、B側300mm電極、オーバーレイボーラス使用。皮下脂肪が厚く、アンダーバストに強く疼痛が出現し最大出力到達時間20分・最大出力300Wが限界であり、治療が難渋したため様々な方法を試みた。
      【方法】テーピングにて胸壁のフラット化、エコーゼリーの塗付、アンダーバストへ10%NaClを含ませたガーゼ、乾きガーゼを被覆、円形型置きパッド使用、特注円柱置きパッドを使用し疼痛が出現した個所に対処法を試みた。
      【結果】テーピングは最大出力到達時間変化なし・出力33.33%増加。エコーゼリーはテーピングと最大出力到達時間・出力ともに変化なし。アンダーバストへ10%NaClを含ませたガーゼは最大出力到達時間変化なし・出力83.33%へ増加するもその後ガーゼへ熱感が出現。乾きガーゼは最大出力到達時間変化なし・出力66.66%増加。円型置きパッドは最大出力到達時間50%短縮・出力50%増加。特注円柱置きパッドは最大出力到達時間50%短縮・出力66.66%増加。
      最大出力到達時間・出力にそれぞれ成果を出せたが疼痛はやや緩和の程度であり、グリッピングマッサージは必須であった。特注円柱置きパッドは疼痛自制内となり、治療継続が可能となった。
      【考察】アンダーバストの熱感、疼痛であったため置きパッドの形状を円柱にしたが、万人に使用出来、体の形に添う材質を模索し、セラバンドを山本ビニター協力のもと減衰率を測定し現在使用している。体型や男女問わず使用可能であり疼痛緩和に効果があると考える。
      【結語】様々な案を出し合い試みることで疼痛自制内まで成果をあげた。疼痛に真摯に対応することで患者との信頼関係も生まれ治療継続に繋がったと考えられ、模索することでスタッフの成長にも繋がった。
    • W1-6
      温熱治療(ハイパーサーミア)を受ける患者への援助 〜看護師の視点での工夫〜

      松岡 さなえ

      産業医科大学病院 看護部

       温熱治療(ハイパーサーミア)はがん治療を受ける患者にとって、決して楽な治療ではない。治療中の熱感や疼痛によって、「温熱治療」を「激熱治療」と表現する患者もいるほどである。温熱治療が他の治療と大きく違うところは、患者の頑張りによって、熱の入り具合が増強され、治療効果にも影響するということである。患者の温熱治療に対する治療効果への期待も大きい反面、治療中の苦痛により患者本人から治療の継続を断念する場合や、出力を下げて治療効果が得にくいまま治療を継続せざるおえない場合もある。
      私たち看護師は、患者が辛い治療をきついなりにも頑張ろうと思えるよう、患者の治療継続への意欲をつなげていくにはどう関わって行ったらいいか、治療に携わる他スタッフと日々模索している。
      2019年の当院における放射線治療部門の新棟開設にあたり、放射線治療室、温熱治療室など治療エリアが拡大され、担当技師や看護師など、温熱治療に関わる人数も増え、各スタッフが患者情報の把握や伝達に看護師の調整能力の工夫も必要であった。また、放射線治療や化学療法などと組み合わせて行うなど、多職種との連携も重要な要素であり、患者がより効率よく治療効果が高い状況で継続できるよう、患者を取り巻く他スタッフとの連携、温熱治療を受ける患者との関わりについて当院での工夫を看護師の立場で発表する。
      治療を終えた患者が「激熱治療」ではなく「次の治療も宜しく」と笑顔で言ってもられるそんな「温熱治療」を目指し看護師として日々活動している。
  • 9/2/17:30-18:30

    特別講演

    座長

    古倉 聡京都先端科学大学

  • 9/3/9:00-10:15

    シンポジウム2

    座長

    河合 憲康名古屋市立大学

    • S2-1
      HSP40/DNAJA1による構造変異型p53依存的な癌転移促進機構の解明

      戒田 篤志

      東京医科歯科大学

      癌抑制因子p53は、腫瘍において変異頻度の高い遺伝子のひとつである。p53変異が生じると、従来の癌抑制的な機能を失うだけではなく、癌の進行や転移を促す新たな機構を獲得 (Gain of function: GOF)することが知られており、この機構には、変異p53の安定化・蓄積が重要であるとされているが、その詳細は不明だった。最近、私たちのグループでは、HSP40ファミリーのDNAJA1が構造変異を示すp53と結合することにより、変異p53の安定化に寄与していることを見出した。すなわち、この知見は、DNAJA1が構造変異型p53とinteractionすることで、癌の進行や転移に寄与する可能性を示唆している。そこで、本研究では、様々なp53ステータスを有する頭頸部扁平上皮癌 (HNSCC)細胞株を用い、p53ステータスの違いに応じたDNAJA1の癌転移における生物学的役割について検討した。
      構造変異型p53を有するHNSCC細胞株では、DNAJA1ノックダウンにより、変異p53レベルの減少とともに、filopodia形成能および細胞遊走能、CDC42/RAC1活性が減少することを見出した。一方、DNA contact変異p53や野生型p53を有した、またはp53を欠損したHNSCC細胞株においては、DNAJA1をノックダウンしても、p53レベルおよび細胞遊走能に有意な変化は認められなかった。共免疫沈降の結果から、DNAJA1は、構造変異型p53と結合していたのに対し、DNA contact変異p53では有意な結合は認められず、DNAJA1と構造変異型p53間の結合が細胞遊走能の亢進に重要であることが示唆された。以上より、構造変異型p53を有するHNSCCでは、DNAJA1が有望な治療標的となり得る可能性が示された。
    • S2-2
      フラーレンナノクリスタル-金ナノ粒子ハイブリッドの開発とセラノスティック応用

      河﨑 陸

      広島大学大学院先進理工系科学研究科

      本発表ではフラーレンナノクリスタルと金ナノ粒子のハイブリッドからなるナノ材料を超分子化学的手法により作製し、その光音響イメージングと光温熱療法への応用について検討した結果について報告する。ここでフラーレンはその高い光特性から光音響イメージングや光温熱療法などのセラノスティック材料への応用が期待されている。しかしながら、フラーレン単独では水中における分散性に乏しいことや生体透過性に優れた可視光や近赤外領域における吸収に乏しいことが課題として指摘されている。そのため、その生体応用は制限されてきた。当研究室では、超分子化学的な手法を用いることで水分散性の高いフラーレンナノクリスタルが調製可能であることを見出した。またその一方で光アンテナ分子の複合化による吸収帯の改善も可能であることを報告している。これらの知見に基づき、光音響イメージングや光温熱療法への応用が可能な金ナノ粒子を光アンテナ分子として用いた系を設計し、作製した。本システムは生体内における腫瘍組織のイメージングが可能なだけでなく、光温熱療法に基づく殺細胞効果を誘導可能であることが明らかとなった。これらの結果から、本システムは光音響イメージングと光温熱療法における有用なプラットフォームとして期待できる。
    • S2-3
      熱に強いがん細胞の発見と温熱耐性機構の解明

      畠山 浩人

      千葉大学 大学院薬学研究院 薬物学研究室

      がん細胞は一般に熱に弱いとされているが、本当にどんながん細胞も熱に弱く死にやすいのだろうか?様々卵巣がん細胞を様々な温度に暴露しその後の生存率を評価したところ、細胞死を誘導できる温度は大きな差があり、決してすべてのがん細胞が熱に弱いわけでなかった。抗がん剤に耐性が存在するように、温熱に耐性を示すがん細胞が存在することを発見した(Hatakeyama H, et al. Cell Rep, 2016)。
      筆者はなぜ温熱への感受性が異なるのかを解明するため、温熱で変動するタンパク質発現をLC-MS/MSで網羅的に評価した。その結果、熱耐性細胞は温熱下でユビキチン化酵素で解糖系酵素群を分解していた。またCE-TOFMSによる細胞内代謝を定量し、温熱下で解糖系関連代謝物が減少しており、温熱下で解糖系代謝を低下させていた。一方で、温熱耐性がん細胞では、温熱下で酸素消費量が増大しミトコンドリアが活性化しており、ミトコンドリア電子伝達系の亢進によってATP産生していることが示唆された。これらの結果から、熱に強いがん細胞では、ATP産生に関するエネルギー代謝を解糖系から電子伝達系へとシフトする“代謝適応”が引き起こされていることが示された(Kanamori T, et al. Sci Rep, 2021)。本講演では、がん細胞の温度応答性、温熱耐性メカニズムについて紹介し、代謝適応がどのように温熱耐性に寄与するか、またがん治療へどのように展開していけるか議論したい。
  • 9/3/10:20-12:00

    シンポジウム3

    座長

    片山 寛次 さくら病院

    • S3-1
      高リスクおよび超高リスク前立腺癌に対する領域加温による温熱療法を併用した根治的放射線治療

      矢原 勝哉

      倉敷成人病センター

      <目的>
      本研究の目的は、高リスクおよび超高リスク前立腺癌に対する、3DCRTおよびIMRTによる温熱放射線療法の治療効果を評価し、より高い温度因子による温熱療法が生化学的再発(bDFS)へもたらす影響を検討することである。
      <方法>
      2004年6月から2009年10月まで3DCRT(70Gy/35分割)、2011年3月から2018年12月までIMRT(76Gy/38分割)により産業医科大学病院にて根治的放射線治療を完遂した高リスクまたは超高リスク前立腺癌患者のそれぞれ146例、123例を対象とし遡及的検討を行った。3DCRT146例中82例、IMRT123例中70例は温熱放射線療法を施行した。
      温熱療法は深部領域加温法により総5回(中央値)、放射線照射直後に施行した。直腸腔内温度を3DCRTで82例中75例、IMRTで全例に測定した。内分泌療法は3CDRT、IMRTで、放射線治療の施行前にともに9ヶ月間(中央値)、施行後にそれぞれ5ヶ月間、24か月間(中央値)併用された。bDFSに影響を及ぼす予後因子の同定のため、温度因子、患者の臨床的特徴や内分泌療法の期間に関して統計学的解析を行った。
      <結果>
      経過観察期間の中央値は、3DCRT、IMRTそれぞれ61ヶ月, 64ヵ月であり、5年bDFSは、温熱放射線療法群と放射線療法単独群にいずれも有意差を認めなかった。温度因子では、3DCRTにおいて、CEM43T90≧1minの患者のbDFSは、放射線治療単独群と比較し有意に良好であった。IMRTにおいては、CEM43T90>7minの患者のbDFSはCEM43T90≦7minまたは放射線治療単独群よりも有意に優れていた。
      <結論>
      高リスクおよび超高リスク前立腺癌に対する根治的放射線治療において、より高い温度因子による温熱療法を併用することで、bDFSが改善する可能性がある。
    • S3-2
      Thermal doseを用いて温熱効果を評価する開腹法High-temperature HIPEC

      片山 寛次

      さくら病院

      【はじめに】あくまでがん温熱療法である腹腔内温熱灌流化学療法は、腹腔内灌流液温を高く維持するほど効果が高い事は明らかである。しかし、過度な高温では合併症が増加する。私どもは,安全性と効果の改善のため1985年開腹法HIPECを開発し,腹腔内数点の測定温からThermal dose(TD)を計算することで温熱効果を評価してきた。
      【方法】胃癌、大腸癌と腹膜偽粘液腫を中心に施行.体表面積に近い腹膜全体を43℃以上で加温する,High-temperature HIPEC (H-HIPEC) では,広範熱傷と同様術後大量輸液とICUにおける循環呼吸管理が必要である.これに対し,42℃までのいわゆるmild hyperthermia では,抗癌剤温熱増感作用に期待する化学療法である.米村、Sugerbaker等の腹膜亜全切除+HIPECに対し,可及的に臓器を温存しつつ,腫瘍をできるだけ減らした(CRS)上でH-HIPECを行い,TDを計算することにより温熱効果を評価した。
      【結果】初期の胃癌腹膜転移治療において、HIPEC中に得られたTDと予後の間に有意差が認められた。H-HIPECを行った大腸癌p3症例では、CRSでCC0-1(米粒大以上は切除) でTD30分以上を得たH-HIPEC施行症例のMSTは41M、cc2-3では11Mと高い生存が得られた.腹膜偽粘液腫ではTD30分以上を得たH-HIPECで5生82.5%と高い生存を示した。合併症死亡はなかった。
      【考察】腹膜播種治療としてのCRS+ H-HIPECの効果の改善と合併症の低減のためには, HIPECの手技を標準化し、その質を評価できることが重要である。そのためには、腹腔内を均一に加温する開腹法又は腹腔鏡下加温が有用である。また、TDを用いて加温効果を評価し標準化する事が必要である。
    • S3-3
      “オンコサーミア”の特徴と臨床応用―細胞および移植腫瘍レベルから見た分子応答に関する温熱との比較

      近藤 隆

      名古屋大学

       ラジオ波やマイクロ波はすでにがんのハイパーサーミア(温熱)治療に用いられており、50年以上の歴史がある。最近、必ずしも熱作用によらない電磁波がん治療として、出力変調電磁波を利用した“Oncothermia”(mEHT; modulated Electro Hyperthermiaとも称される)がある。ここでは、mEHTの特徴について、培養細胞および移植腫瘍で調べた。ヒトリンパ腫細胞を用いた実験では、同一温度であっても、温水加温に比べてmEHTでは、有意にアポトーシスが増強された。実験的治療効果と分子機構について情報を得るため熱作用(恒温水槽による加温、WB)、熱作用+電磁波の非熱作用(変調無しmEHT)、および熱作用+電磁波の非熱作用+電磁波変調作用(mEHT)について比較した。Balb/cマウスに移植したColon26大腸がんを対象に、腫瘍内温度は41.5 ℃として比較した。その後、4および24時間後に腫瘍の組織学的検討を行うとともに、処理4時間で腫瘍組織での遺伝子発現の変化をGeneChip法で調べ、Ingenuity Pathway Analysis法により、遺伝子ネットワーク解析を行った。mEHT処理では変調の有無によらず組織学的検討では明らかな腫瘍細胞死が認められた。一方、WB処理では明らかな変化は認められなかった。遺伝子ネットワークの比較ではMetastatic potential of a tumor、Cell movement、Cell migrationおよび Cell cycle progressionの4群では、対照およびWB処理と比べて、mEHT処理(変調の有無によらず)発現低下が認められた。これらの結果は、恒温水槽による加温効果と電磁波加温による効果の違いを反映し、電磁波の非熱効果を反映した。一方で変調効果の違いはCellular protection-HSP networkおよび Leucocyte migrationの2群の遺伝子ネットワークの発現において認められ、変調無しmEHTで増加、mEHT処理では低下傾向が認められ、電磁波の変調効果を示したものと言える。
      富山大学附属病院ではmEHTを用いた治療を行っており、今まで得られた臨床結果についても紹介する。
      謝辞:基礎研究については、Andocs Gabor, Mati Ur Rehman, 田渕圭章の各先生に、臨床研究に関しては長田拓哉、関根慎一、荒井美恵、森山亮仁、藤井努の各先生に感謝申し上げます
    • S3-4
      当科における進行口腔癌に対する根治的臓器温存療法-逆行性超選択的動注化学放射線療法とハイパーサーミアの併用療法-

      小泉 敏之

      1) 横浜市立大学大学院医学研究科 顎顔面口腔機能制御学

      当科では進行口腔癌に対し、逆行性超選択的動注化学放射線療法(以下、動注CRT)を行い原発腫瘍の手術回避を図っているが、頸部進行症例に対しては動注CRTのみでは転移リンパ節の制御が困難な場合がある。そのため、頸部進行症例では動注CRTと頸部へのハイパーサーミア(以下、HT)の併用療法を行っている。当科では主治医がHTのセッティング、加温、測温から治療中の有害事象まで一貫して管理している。本シンポジウムでは当科における進行口腔癌に対する動注CRTと頸部へのHTの併用療法の現状を紹介するとともに、治療効果について報告する。
      原発腫瘍の切除回避を目的として動注CRTと頸部へのHTを併用した進行口腔癌26例を対象とした。動注カテーテルを浅側頭動脈および後頭動脈から原発腫瘍の栄養動脈に留置し、動注CRT(DTX:50~70mg/m2、CDDP:125~175mg/m2、RT50~70Gy)と転移リンパ節に対してHTを1~2回/week、計3~8回行った。HTは転移リンパ節の直上皮膚に温度センサーを設置して測温し、10分までに42.5℃を超えるように調整して50分間加温した。原発および転移リンパ節に対する治療効果、局所・領域制御率および全生存率を算出した。原発腫瘍はすべてcomplete response (CR)であったため全例頸部郭清術のみを行った。転移リンパ節の病理学的治療効果はpathological CRが17例(65.4%)であった。26例中21例が生存、5例が死亡した。5年局所・領域制御率は95.6%、5年全生存率は80.2%であった。
      動注CRTとHTを併用することで原発および頸部リンパ節転移に対する高い治療効果が得られたが、遠隔転移が予後因子となっていた。そのため、現在はセツキシマブの全身投与を併用するレジメンを臨床研究として行っており、さらなる予後の改善を目指している。
    • S3-5
      頸部表在腫瘍に対する浅部加温と局所効果に関する検討

      森崎 貴博

      産業医科大学病院 放射線治療科

      【目的】表在癌に対する浅部加温の有効性はこれまでに報告されている。今回、我々は温熱療法施行時に腫瘍温度の測定を行ない、頚部表在腫瘍に対する温熱療法の温度上昇と局所効果について検討を行なったので、報告する。

      【方法】2017年1月から2022年5月までに頭頚部癌の頸部病変に対して表在加温を実施した33例を対象とし、後方視的に評価した。治療効果判定のCTを撮影していない6例は検討から除外した。総治療回数とTmaxの中央値は、それぞれ2回(1~27回)と44℃(40.1~50.3)であった。加温時の出力と治療時間の中央値は250W(70~700W)、50分(35~70分)であった。併用療法は化学療法が4例(セツキシマブ3例、シスプラチン1例)、放射線治療が24例、高気圧酸素療法14例であった。

      【結果】腫瘍縮小率の中央値は31%(8~100%)で、PR以上の治療効果を得たのは27例中20例(74%)で、このうちCRは2例でみられた。少なくとも治療後3か月でPDとなった症例はなかった。PRを得た症例とSDであった症例のTmaxに有意差はみられなかった(p=0.29, t検定)。温熱療法に関連した有害事象はⅠ度熱傷が3例、Ⅱ度熱傷が3例の総6例に認めたが、Ⅲ度熱傷に至った症例はなかった

      【考察】浅部加温は頭頚部癌の頸部病変の局所制御に有用であるが、Tmaxと局所制御の効果に差はなかった。SD相当となった症例は再発症例が多く、全例で治療前のCTで腫瘍内部に壊死を認めた。また、臨床的にPRやCRでも温熱療法後にCTを撮影した症例のみに絞っていたことから正確に評価を行なえていない可能性がある。今後さらなる検討が必要と考えられるが、頸部の表在腫瘍に対する温熱療法の高い局所効果が示された。

  • 9/3/12:10-13:10

    企業セミナー

    座長

    大栗 隆行産業医科大学

    • CS-1
      待望のハイパーサーミア:導入までの長き道のりと試行錯誤の初期経験

      青木 昌彦

      弘前大学 放射線腫瘍学

  • 9/3/13:20-14:50

    ワークショップ2

    座長

    今田 肇戸畑共立病院

    • W2-1
      千葉県がんセンターにおけるハイパーサーミアの導入経験

      千葉 聡

      千葉県がんセンター・食道胃腸外科

      当院は、千葉県の中心部にあるがん治療専門病院です。診療科は食道胃腸外科、肝胆膵外科、呼吸器科、泌尿器科、婦人科、乳腺科、整形外科、頭頚科、消化器内科、化学療法科、放射線治療部と多岐に渡り、2021年の手術件数は全科合わせて3190件、15000件を超える化学療法と6805件の放射線治療が行われています。千葉県唯一のハイパーサーミア施設であり、これは当院に通院中の患者さんの署名活動と、千葉県議会での決議を受けて機器の導入がなされています。2020年10月28日よりハイパーサーミアを開始し、2022年5月30日まで114名に対して910件の治療を行っています。
      運用は1日5件で、担当医師2名と臨床工学技士4名で担当し、看護師を含めての週1回のカンファレンスを開催しています。
      適応は、①患者さん自身の治療希望があること、②ECOG PSが0-1、③がん薬物療法か放射線療法との併用、④画像上に標的病変があることの4点を開始の際のルールとしています。
      実施に当たっては、CT検査等により加温部位の中心を決定し電極のサイズを決めます。体位は腹臥位が第一選択。深部加温では、オーバーレイボーラスを設置、還流水は5℃にセット、初回は直腸温の測定を行っています。浅在加温では、体位や電極のサイズ等を慎重に決め、4点の温度センサーの穿刺・留置を行い加温しています。還流水は40℃まで上げることもあります。
      治療の内訳は、がん薬物療法との併用が111例、放射線療法が9例で、深在性が105例、浅在性は10例でした。短期成績は、RECIST1.1にて評価可能であった38例において、CR;2例、PR;9例、SD;19例、PD;8例であり、奏効率は28.9%、病勢コントロール率は78.9%でした。
      合併症は、疼痛が12名(10.5%)で、その頻度は14件(1.5%)、そのうち継続困難となった症例は4例(3.5%)ありました。水泡形成などの浅達性Ⅱ度熱傷が21件(2.4%)、ワセリン軟膏などの塗布にて軽快しています。脱水症は4件(0.4%)起きていますが、メインとなるがん薬物療法や放射線治療を継続することができ、安全な加温が出来ています。
      今後も、安全な加温を継続し、データを積み重ねることでエビデンスの構築を行い、多くの患者さんにハイパーサーミアが提供できるように進めて行きたいと考えています。
    • W2-2
      総合大雄会病院におけるハイパーサーミア導入後4年の経過

      供田 卓也

      総合大雄会病院

      当院では2018年6月にハイパーサーミア治療を開始し、2022年4月までに218例の症例を経験した。男性111名、女性107名、年齢は10~91歳(中央値68歳)。原疾患別では、肺癌19%、前立腺癌17%、子宮癌10%、結腸・直腸癌10%、膵臓癌8%、乳癌8%、その他。併用された治療別では化学療法100例、放射線治療64例、化学放射線治療38例。温熱単独治療は16例だった。新鮮例は92例含まれ、そのうち根治目的は59例で、原発巣別の内訳は前立腺癌が23例と最も多く、次いで肺癌が15例、子宮頸癌が8例であった。
      2018年の導入当初、東海地区にはハイパーサーミアを有する施設は比較的少なく、治療を希望してこられた患者については、極力断らず治療を行ってきた。そのため、進行癌、再発例も多く、治療目的は姑息的となることも多かった。標準治療が行えている状況では、主となる治療への併用をお勧めした。
      治療時間は50分を基本とし、体力面で厳しい場合などは40分を目標に加温している。治療枠は月~金の平日に午前3枠、午後3枠で予約対応している。治療室内での患者対応は、機械の操作を行う放射線技師1名と、熱感・疼痛への対処や体調の確認をする看護師1名の2名体制で行っている。また、週1回、カンファレンスを行いスタッフ間でも情報共有をしている。
      放射線治療との併用においては、照射の直後に加温ができるように時間調整をしている。化学療法との併用においては、院内症例であればできる限り投与当日に加温を行うようにしているが、院外の症例では時間的な制約から翌日加温となることが多い。
      2020年以降はコロナ下の状況で新規治療の受け入れを制限した時期もあった。
      加温の効果が感じられた症例や、対応が難しかった症例の提示とともに現状を報告し、今後の課題について考察する。
    • W2-3
      久留米大学病院におけるサーモトロンRF-8導入の初期経験について

      服部 睦行

      久留米大学病院放射線腫瘍センター

      温熱療法は悪性疾患の治療において、放射線療法や化学療法に温熱療法を併用することにより、より優れた効果を得ることが知られている。当院においても1988年よりマイクロ波、1990年よりRF波で温熱療法を開始し、その効果を経験していたが、機器不具合により不可能となった。2018年に放射線腫瘍センター移設のタイミングで、サーモトロンRF-8の入替導入となった。新システムにおいての温熱療法機器導入であり、事前にスタッフ間で討議した項目として、①運用方法 ②適応疾患 ③治療の実際などがあげられた。
      当初は医師一人で対応しており、施行日・人数に制限せざるをえなかった事より、最大週8枠から開始した。しかし、医師一人での対応は難しかったため、病院との交渉の上、医師・看護師の増員が可能となっていった。
      適応疾患は、脳腫瘍以外の悪性疾患全てに対応したが、肝胆膵腫瘍および骨盤内腫瘍の症例が多い傾向にある。体内金属、ペースメーカー埋込み症例は非適応とし、放射線療法ならび化学療法に併用する補助療法として介入することにした。加温時には、全例腫瘍近傍にセンサーを留置し温度測定をしながら、各症例に応じた出力を設定することを基本とした。治療開始当初は、腹部加温症例に対し2回目もしくは3回目に直腸温計測を行ったが、前述の患者数増加により対応が困難となり、基準の出力を決めた上で各症例において皮膚刺激感などの不快感が出ない出力での加温を行う事となった。
      治療開始後4か月頃より対応スタッフが増員され、治療前後の状態確認、治療中の患者観察、情報収集などに余裕ができ、より細やかな対応ができるようになった。同時に、サーモトロンRF-8及び付属品に対する日々のメンテナンス(電極パッド・灌流水の調整など)に対し細々とした不安点が出現したが、各種問い合わせに対して機器メーカーのサポートを活用した。現在、院内における温熱療法の効果が認識され始め、紹介も増加している。
    • W2-4
      放射線治療併用に重きを置いたハイパーサーミアの初期経験

      伊藤 誠

      愛知医科大学病院

      【背景/目的】
      当院は2022年4月に2台のThermotron-RF8 GR Editionを導入し、ハイパーサーミア(HT)の運用を開始した。特に放射線治療(RT)との併用に注力しており、その初期経験を報告する。
      【方法】
      2022年4月〜6月における症例を解析する。
      【結果】
      HT患者75人のうち、41人(55%)の目的は化学療法(CT)の補助であった。HTはCT当日か前後1日の実施を原則としたが、2日以上の空きを3人に認めた。主な依頼科は消化器科(41%)で、膵癌が大半であった。
      一方で、RT併用は28人(37%)であった。目的は根治/再発救済が19人(68%)で、耳鼻科の依頼(46%)が主であった。
      本人拒否による早期中止を13人に認めた。効果判定可能な14/21人(67%)で腫瘍縮小や疼痛緩和等の有効性が見られた。熱傷を6人(8%)、脂肪硬結を3人(4%)で認めたが、その他重篤な有害事象を認めなかった。
      【考察】
      治療目的の過半数はCTの補助であった一方、RT併用を37%で認めた。この割合は全国的にも高い水準と思われ、従事者が一丸となってHT併用RTの適応を考慮した結果と考える。当院のHT室はRT室のすぐ隣に位置し、実務も診療放射線技師が担っている。これによりRT後直ちにHTを実施する運用が徹底できており、この質の高さが患者・主治医より好感を得たのも一因と考える。特に割合の多い頭頸部癌の症例を蓄積し、エビデンス構築に努めたい。
      一方でCTとの連携は不十分と判断している。CTの効果が最大限に引き出せるよう薬物療法部門と協力し、HTの運用改善に努めたい。また患者意思のサポート、有害事象軽減についても改善の余地があり、今後の課題としたい。
      【結論】
      RT併用に重きを置く、当院のHT初期経験を報告した。今後の課題について先行施設より忌憚ない御意見を賜り、さらに「加温の質を追求」していきたい。
  • 9/3/15:00-15:50

    シンポジウム4

    座長

    浅尾 高行群馬大学

    • S4-1
      日本心血管インターベンション治療学会(CVIT)が行っているJ-PCIレジストリーのこれまでと現状

      石井 秀樹

      群馬大学循環器内科

      日本心血管インターベンション治療学会(CVIT)では、様々な治療・主義に対して、レジストリーを構築してきた。特に冠動脈インターベンションレジストリー(J-PCIレジストリー)は年間25万例程度の経皮的冠動脈インターベンション(PCI)登録があり、本邦PCIの現状と特徴を明らかにし、更にPCI に対する学術的な課題を明らかにし、解決法を模索するための学術的な解析を行っている。
      本邦は他国と比較し、高齢者、冠危険因子である高血圧、糖尿病、脂質代謝異常が多く、全PCI施行患者のうち透析患者は7%強を占める。これらは他国と比較して高い数字であると考えられる。一方、本邦では米国と比較してPCIの対象疾患として急性冠症候群(ACS)の割合が低く、慢性冠症候群に対しての待機的治療が多いという特徴がある。
      我々は2017年にPCIを行った約5万人に対して、治療後一年のフォローアップデータを調査し、欧米との比較にも使用できると考えている。ユニークな結果として、PCI後一年以内に輸血或いは手術が必要な出血を生じる患者が1.7%おり、その出血原因第一位は下部消化管出血だった。
      また、J-PCIは専門医・認定制度との連携などデータベースの有機的な活用も行っていると共に、J-PCIレジストリーのフィードバックシステムも構築し全国データを参考として自施設の立ち位置を確認できるシステムも構築している。
      全国のPCIの治療体制も、J-PCIの協力施設によって、速やかにデータ集積できるようになった。COVID-19 pandemic禍では最大5割程度の施設で待機的PCIは延期対応していたが、ACSについてはほとんどの施設で緊急PCIを通常通りに行っていることも明らかとなった。他国の状況とは明らかに異なり、本邦の循環器医師の高い志が示されたものと考えている。

    • S4-2
      G-residtry systemの開発コンセプトと特徴

      浅尾 高行

      群馬大学数理データ科学教育研究センター

       患者レジストリ登録(疾患登録情報)を条件とした医療機器の承認制度が2020に導入され、稀少疾患や医療機器の開発などのランダム化試験が困難な事案でのレジストリー構築の重要性が高まっている。一方では、レジストリーの構築はアカデミア主体で公正かつ学術的に進めることが望ましいとされることから、関連学会の果たす役割は大きい。
      群馬大学数理DSセンターでは、ビックデータに用いられているNoSQL型のデータベースを採用しスマートホンでの入力を基本とした患者レジストリーシステム(G-Registry)を開発し各種学会などに提供してきた。
      G-Registryは、アカデミアでの利用を前提に開発し、
      ・調査項目や選択肢の追加が可能な柔軟なDatabaseを活用
      ・オープンソースソフトを基盤とした安全で安価なシステム
      ・短時間で直感的入力可能なスマートフォンを用いたタッチGUIの採用
      ・入力結果により次の入力項目を自動選択する分岐機能
      ・患者自身も登録できるPRO機能
      ・主治医の変更に対応
      などを特徴としており、学会や研究会が構築する登録システムとして実装されててきた。G-Registryは、登録ユーザが開発した大学発のシステムで安全性と低コストを実現しており、企業治験と比べて資金や人的リソースが少ない学会主催のレジストリーにおいて特に有用と思われる。

    • S4-3
      局所進行膵がんに対する初回化学療法とハイパーサーミアの併用治療の多施設前向き登録 (JSTM-PAN01LA)-患者レジストリの紹介

      大栗 隆行

      産業医科大学病院 放射線治療科

      39~45℃の加温を電磁波により行う温熱療法(ハイパーサーミア)は、本邦では1990 年より癌種によ らず健康保険適応となり放射線治療や化学療法との併用による集学的治療の一環としてがん治療に用い られている。 基礎生物学研究により39~45℃の加温は蛋白質変性や細胞内代謝の変化などにより、がんの細胞死を 誘導することが示されている。温度依存性が高く42.5 度を超すと効果が急激に高まる。加温により正常 組織は血流が急激に増加し冷却される一方で、腫瘍組織は、血流増加が乏しく温度上昇しやすいことを利 用している。また、治療抵抗性のがん細胞において温熱の抗腫瘍効果が得られやすい点が知られている。 難治性がん局所進行膵臓がんに対する標準治療は、化学療法や化学放射線療法が行われるものの、難治 性であり治療成績の改善が望まれている。化学療法や化学放射線療法とハイパーサーミアの併用治療に 関して、単施設の第2 相前向き臨床試験や後ろ向き観察研究の報告がなされているものの、多機関の治 療成績を前向きに集積したものは非常に少ない。 日本ハイパーサーミア学会では患者レジストリの構築を目指している。多機関前向き登録研究 (JSTMPAN01LA“ 進行膵臓がんに対する初回化学療法とハイパーサーミアの併用治療”の実施開始を予定してお り、本発表ではその詳細を紹介する。
  • 9/3/16:00-17:00

    シンポジウム5

    座長

    齊藤 一幸千葉大学

    黒田 輝東海大学

    • S5-1
      脂肪組織のプロトン成分比による重み付けスピン-スピン緩和時間を用いたMRI温度計測

      黒田 輝

      東海大学情報理工学部情報科学科

      【目的】MRIによる非侵襲温度計測において高含水組織では水分子プロトンの磁気共鳴周波数を用いることが実用的である.他方,脂肪組織では脂肪酸に含まれるプロトンの共鳴周波数に温度依存性がないため,スピン-スピン緩和時間T2 を使うことが有効であるが,正確な測定のためには脂肪酸に含まれる主なプロトン成分の含有比を求め,それによって加重平均された T2 を用いる必要がある.そこで今回,鎖状メチレン基 と終端メチル基の実測比率に基づく温度分布画像化を試みた.【方法】脂肪酸の持つ主なプロトンは 鎖状メチレン基と終端メチルに由来する.5 つの異なるブタ脂肪サンプルについて11TのNMR分光器を用いた実測結果に基づき,メチレン基とメチル基のT2の温度係数の重み付け平均を求めた.次にブタ腹部内臓周囲の脂肪塊をマイクロ波加温し,3T-MRI装置によるdual echo法によりT2-mapを得た.水抑制をかけた高速スピンエコー法(CPMG法)を用いて以下の条件で3スライスの撮像を行なった:TR, 1,500ms; TE, 35及び182ms, ETL, 34; FOV, 18  18 cm; Slice thickness, 5mm; Acquisition matrix, 128 × 102.この条件による撮像時間は約10sで,この間加温は停止し,撮像後直ちに加温を再開することを10回繰り返した.得られたT2-mapを上で求めた係数に基づき温度画像に変換した.【結果】 ブタ脂肪におけるメチレン基・メチル基のプロトン含有量により重み付けされたT2の温度係数は約5 %/oCであった.この温度係数を用いて画像化された脂肪温度画像は加温部位における温度上昇を明瞭に示すものであった.マイクロ波のパワー・実効印加時間が10W・200sの時の温度上昇は10oC,35W・200sの時は32oCであった.【結論】メチレン基とメチル基の重み付けT2を利用した脂肪温度計測の有用性が示された.
    • S5-2
      マイクロ波による腎デナベーションにおける機械学習による患部の温度予測

      齊藤 一幸

      千葉大学

      【目的】MRI による非侵襲温度計測において高含水組織では水分子プロトンの磁気共鳴周波数を用いる ことが実用的である。他方、脂肪組織では脂肪酸に含まれるプロトンの共鳴周波数に温度依存性がない ため、スピン-スピン緩和時間T2 を使うことが有効であるが、正確な測定のためには脂肪酸に含まれる 主なプロトン成分の含有比を求め、それによって加重平均された T2 を用いる必要がある。そこで今 回、鎖状メチレン基 と終端メチル基の実測比率に基づく温度分布画像化を試みた。 【方法】脂肪酸の持つ主なプロトンは、鎖状メチレン基と終端メチルに由来する。5 つの異なるブタ脂 肪サンプルについて11T のNMR 分光器を用いた実測結果に基づき、メチレン基とメチル基のT2 の温度係 数の重み付け平均を求めた。次にブタ腹部内臓周囲の脂肪塊をマイクロ波加温し、3T-MRI 装置による dual echo 法によりT2-map を得た。水抑制をかけた高速スピンエコー法(CPMG 法)を用いて以下の条件 で3 スライスの撮像を行なった:TR, 1,500ms; TE, 35 及び182ms, ETL, 34; FOV, 18  18 cm; Slice thickness, 5mm; Acquisition matrix, 128 × 102.この条件による撮像時間は約10s で、この間加温 は停止し、撮像後直ちに加温を再開することを10 回繰り返した。得られたT2-map を上で求めた係数に 基づき温度画像に変換した。 【結果】ブタ脂肪におけるメチレン基・メチル基のプロトン含有量により重み付けされたT2 の温度係数 は約5 %/oC であった。この温度係数を用いて画像化された脂肪温度画像は加温部位における温度上昇を 明瞭に示すものであった。マイクロ波のパワー・実効印加時間が10W・200s の時の温度上昇は10oC、 35W・200s の時は32oC であった。 【結論】メチレン基とメチル基の重み付けT2 を利用した脂肪温度計測の有用性が示された。
    • S5-3
      非侵襲温度分布計測機能を有する小形矩形空胴共振器アプリケータの加温特性

      新藤 康弘

      東洋大学理工学部機械工学科

      我々は先行研究において、膝関節深部温熱リハビリテーションを目的とした小型矩形共振器アプリケータの開発を行っている。また、超音波画像を用いた非侵襲生体内温度分布計測システムの開発に着手している。本研究では、提案している加温方式の安全性の確保と治療効果の向上を目的として、非侵襲温度計測機能を有する共振器の開発を行い、その有用性について寒天ファントムを用いた加温実験および、精肉を用いた加温実験を実施し、実験的に検討を行った。
      加温実験結果より、試作した加温システムを用いることで深部を有効に局所加温できることを確認し、また、温度計測に関しても誤差0.3℃以内で計測可能であることを明らかにした。