頭頸部癌に対する治療の動向とハイパーサーミアの役割

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頭頸部癌に対する治療の動向とハイパーサーミアの役割

光藤健司(横浜市立大学大学院医学研究科顎顔面口腔機能制御学)

頭頸部癌の治療は切除可能であれば手術が標準治療であるが,進行頭頸部癌に対しては放射線療法,薬物療法などを組み合わせた集学的治療となる.頭頸部癌に対して全身的な要因,手術拒否,あるいは遠隔転移があることから手術が行われない場合には,放射線治療に薬物療法,ハイパーサーミアなどを併用する治療となる.

頭頸部癌に対して放射線治療単独(RT群)と放射線治療にハイパーサーミアの併用(RT+HT群)に関するメタアナリシス1)では,局所領域制御率がRT群では39.6%(31.3%から46.9%),RT+HT群では62.5%(33.9%から83.3%)であった.また,RT+HT群はRT群と比較して生存期間中央値の向上,5年生存率の向上,stage III, IVでは無病生存率の向上を認めた.しかし,これらの試験では対象症例およびハイパーサーミアの回数,時間などが均一ではない.また,ハイパーサーミアのターゲットが原発腫瘍,頸部転移リンパ節,あるいは原発腫瘍と頸部転移リンパ節の両方など一定ではないが,ハイパーサーミアを併用することによって局所領域制御,生存率の向上に寄与している.

頭頸部癌に対する化学放射線治療とハイパーサーミア併用の有効性についての比較試験は少ない.T1-4N2-3M0上咽頭癌に対する化学放射線治療(CRT群)と化学放射線治療と頸部転移リンパ節にハイパーサーミアを併用した治療(CRT+HT群)との比較が行われ,5年局所制御率はCRT群: 76.9%,CRT+HT群: 96.1%(p= 0.001),5年無病生存率はCRT群: 20.5%,CRT+HT群: 51.3%(p= 0.001),5年生存率はCRT群: 50.0%,CRT+HT群: 68.4%(p= 0.001)で,局所制御率,無病生存率,生存率すべてにおいてCRT+HT群が有意に高かった2).そのほか再発喉頭癌に対し化学放射線治療(CRT群)と化学放射線治療にハイパーサーミアの併用(CRT+HT群)の比較試験では,生存率においてCRTにHTを併用した方が良好な治療効果が得られたという1990年の報告もあった.

頭頸部は咀嚼・嚥下・発声・呼吸などの重要な機能があることから,近年では局所進行頭頸部癌に対しても化学放射線療法による臓器温存が図られるようになってきたが,その治療効果は決して満足のいくものではない.局所進行頭頸部癌,再発/転移頭頸部癌に対して分子標的薬であるCetuximabや免疫チェックポイント阻害剤であるNivolmabなどの薬物療法が行われるようになった.今後,新たな治療法として,従来の化学放射線療法,薬物療法にハイパーサーミアを併用することにより予後の改善が期待できる.そのためには基礎および臨床研究が望まれる.

参考文献

  • Datta NR, et al. Hyperthermia and radiotherapy in the management of head and neck cancers: A systematic review and meta-analysis Int J Hyperthermia, 32:31–40, 2016.
  • Kang M, et al. Long-term efficacy of microwave hyperthermia combined with chemoradiotherapy in treatment of nasopharyngeal carcinoma with cervical lymph node metastases. Asian Pac J Cancer Prev, 14:7395-400, 2013.