ハイパーサーミア学会

日本ハイパーサーミア学会
38回大会
Online2021 これからのハイパーサーミアに期待されるもの

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  • ワークショップ【HIPECセミナー】

    座長

    片山 寛次つくし野病院

    • HIPECセミナー概要

      片山寛次

      つくし野病院

      概説 抄録なし
    • 腹膜播種治療の世界の現況

      米村 豊

      草津総合病院・岸和田徳洲会病院・腹膜播種センター

      I have no COI. Executive member of Peritoneal Surface Omcology Group International Until the late 1990s, peritoneal metastasis (PM) was considered a terminal stage, and almost all patients with PM died of the disease within a median of 5-7 months after palliative systemic chemotherapy or surgery alone. An innovative treatment for PM, hyperthermic intraperitoneal chemoperfusion (HIPEC), was developed in 1980 by Spratt, who reported the first case successfully treated with HIPEC. HIPEC has been used since then for the treatment of PM from gastrointestinal cancer, and new regimens of systemic chemotherapy have been developed and used to treat PM since the late 1990s. However, the prognosis of patients with PM was poor after HIPEC or systemic chemotherapy alone. In 1995, Sugarbaker developed a new surgical technique of complete removal of PM named peritonectomy. In the late 1990s, a paradigm shift occurred in the treatment of PM. Since PM is considered a local disease, confined to the peritoneal cavity, a combination therapy with cytoreductive surgery (CRS) using peritonectomy to remove macroscopic detectable PM and perioperative chemotherapy (POC) to eradicate micrometastasis was proposed by the Peritoneal Surface Oncology Group International (PSOGI). This strategy is considered a comprehensive treatment that improves the long-term survival, and a curative approach in selected patients with limited PM. Since 1980, Japanese surgical oncologists have been spearheading the use of CRS plus HIPEC for treating PM from gastric cancer. Hamazoe and Yonemura have reported the results of RCTs to verify the effect of HIPEC for the prophylaxis of peritoneal recurrence after curative resection of advanced gastric cancer. These two studies indicated that HIPEC is effective in preventing peritoneal recurrence of gastric cancer with serosal invasion. In 2002, intraperitoneal chemotherapy using taxans was developed by Fushida for the treatment of PM from gastric cancer, and led to the development of neoadjuvant intraperitoneal/systemic chemotherapy (NIPS) reported in 2006. In 2009, extensive intra-operative peritoneal lavage (EIPL) was developed by Shimada, and markedly improved the survival of patients with positive lavage cytology in prospective randomized clinical trials. In 2016, the Japanese/Asian School of Peritoneal Surface Oncology (JASPSO) was founded at Kishiwada Tokushukai hospital, Oosaka as a joint venture with PSOGI. It provides adequate and structured training in the management of PM. Students receive highly specialized knowledge and learn to master 2 the complexity of aggressive CRS combined with NIPS, LHIPEC, HIPEC, early postoperative chemotherapy (EPIC), and systemic chemotherapy. It was a long hard journey to developing a new treatment system in a new country. Over the past 4 decades, members of PSOGI studied the international multicenter treatment results of peritoneal metastasis from various primary sites, i.e., mesothelioma, pseudomyxoma peritonei, colorectal cancer, ovarian cancer , and gastric cancer. The PSOGI group have achieved exciting progresses in the management of PM patients and the treatment guidelines consisting of peritonectomy and perioperative chemotherapy were already described in the recommendation guidelines of NICE, NCCN, and ESMO.
    • 腹膜播種に対するCRC+HIPEC, HIPECのエビデンス、ガイドラインの現況

      鍛 利幸

      岸和田徳洲会病院外科 腹膜播種センター

      HIPECセミナー ハイパーサーミア学会のガイドラインでは、大腸癌腹膜播種、腹膜偽粘液種に対するCRS+HIPECの推奨度は弱く推奨になっており、エビデンスレベルはそれぞれB、Cである。それぞれのガイドラインの現況と最近のエビデンスについて述べる。 1) 大腸癌腹膜播種に対するCRS+HIPECについて、NCCNガイドラインでは、経験のある施設で、限られた腹膜播種症例でR0切除が得られる場合に、CRS+HIPECを考慮してよいと記載されている。一方、我が国の大腸癌ガイドラインでは、限局性転移症例で切除を強く推奨する一方で、広範囲な腹膜転移に対するCRS+HIPECは推奨されていない。最近、大腸癌腹膜播種に対するCRS+HIPECに関して、3つの重要な論文が発表された。CRS+HIPECにおけるHIPECの効果を検証したPRODIGE7、大腸癌R0手術が行われた症例のうち再発高危険群に対するsecond-look surgery + HIPECの効果を検証したPROPHYLOCHIP、同様に予防的HIPECの効果を検証したCOLOPECである。しかし、PRODIGE7では、CRS+HIPECが全身化学療法単独に比べて予後を改善し治癒率を高める可能性が示された一方で、HIPEC単独の効果を明らかにすることはできなかった。同様にPROPHYLOCHIP、COLOPECでもHIPECの有効性を証明することができなかった。今後は、大腸癌腹膜播種におけるHIPECの意義、あるいはこれらの方法とは異なる最適な方法を明らかにする必要がある。 2) 腹膜偽粘液腫はまれな疾患であり、ランダム化比較試験を行うことが困難である。従って、エビデンスレベルは低く、一般的なガイドラインは作成されていないが、PSOGI、SSOなどの海外の学会ではCRS+HIPECが標準治療として推奨されている。最近発表された、Kusamuraらによる、PSOGIに登録された腹膜偽粘液腫症例1924症例を後ろ向きに解析した研究では、5年生存率は、CRS症例が46.2%に対して、CRS+HIPEC症例は57.8%と有意に高い結果であり(HR=0.65)、HIPEC単独の有効性が示された。 以上のように、大腸癌腹膜播種では、CRS+HIPECが予後を改善し、治癒率を高める可能性が示された一方で、HIPEC単独の効果を示すことができなかった。腹膜偽粘液腫に対して、エビデンスレベルは低いが、海外の学会によるガイドラインではCRS+HIPECは標準的な治療として推奨されており、後ろ向き比較試験では、HIPECの単独の効果が示された。
    • 大腸癌腹膜播種・虫垂原発腹膜偽粘液腫に対する腫瘍減量手術+腹腔内温熱化学療法の治療成績

      森川充洋1)、五井孝憲1)、片山寛次2)

      1 福井大学第一外科、2 つくしの病院外科

      【目的】大腸癌腹膜播種(CRC-P)、腹膜偽粘液腫(PMP)に対する治療は海外で腫瘍減量切除(CRS)+腹腔内温熱化学療法(HIPEC)が拡がっているが、本邦では数施設での施行のみである。当科では腹膜亜全摘を施行せず臓器温存を目指し、かつCC0-1を標準としHIPECは42.5-44℃の高温度で施行しており、治療成績について報告する。 【対象】1990-2020年3月にCRS+HIPECを施行したCRC-P(虫垂癌は除外)56例(P1/2/3:6/9/41例)、PMP(虫垂原発)35例(DPAM/PMCA-I/PMCA:14/6/15例)を対象とした。PCIの中央値はCRC-Pが6、PMPが 18であり、CC0/1/2/3/不明はCRC-P 35/8/10/3/0例、PMP 11/13/6/4/1例であった。 【結果】短期成績は、手術時間(中央値)320分、出血量(中央値、腹水込み)670g、輸血量(中央値/平均)0/365mlであった。人工呼吸管理/術後在院日数の中央値は5/24日、grade3以上の合併症発症率は14%、周術期死亡例は0例であった。CRC-Pの5年生存率(MST)は、P1+2/P3:68%/23%(29M)であり、CC0-1/2-3:45%(46M)/0%(12M)であった。PMP全体/PMCAの5年生存率は83%/66%であり、DPAM、PMCA-Iは観察期間内で1例を除き(107カ月で死亡)生存中である。 【考察】CRS+HIPECは効果的な治療で合併症も容認し得る範囲内と考える。CC0-1が望まれるが、PMPではCC2-3でも良好な予後を得られる症例もあるが、CRC-PのCC2-3の予後は厳しく適応は慎重に行うべきである。
    • 婦人科進行癌に対するHIPEC ~当科での現況と展望~

      黒川哲司1) 井上大輔1) 大沼利通1) 津吉秀昭1) 品川明子1) 知野陽子1) 片山寛次2) 吉田好雄1)

      1福井大学 産科婦人科 2つくし野病院

      HIPECセミナー 婦人科癌の中でも腹膜播種を伴う卵巣癌は予後不良で、治療成績向上が重要な課題となっている。現在の卵巣癌の治療は、分子標的治療剤が注目されており、いくつかの興味深い臨床試験が行われている。分子標的治療剤以外では、HIPECが注目されてきている。そのきっかけとなった論文は、2018年にオランダからNew England Journal Medicine に報告されたものである。内容は、進行卵巣がんにおいて、CRS(cytoreductive surgery)+HIPECが、CRSのみと比較して、良好な生存率を得たというものであった。さらに、その報告以来、「どのような症例に効果を示すか」や「再発症例ではどうか」などの臨床試験が、いろいろな国で行われてきている。 そこで本ワークショップでは、卵巣癌に対し世界から報告されているHIPECの治療効果に加え、当院で行ったHIPECの治療経験を報告する。さらに、HIPECの具体的な方法と効果が報告されているにも関わらず国内でHIPECが拡がらない理由についても考察する。
    • HIPECセミナー HIPEC導入時における研究倫理の諸問題

      片山寛次1)、渡邉享平2)

      1)つくし野病院, 2)福井大学病院 医学研究支援センター

      HIPECの実施に向けての試み:HIPECは現在国内未承認の治療法であるため、原則として「研究」として実施することが推奨される。その場合、本治療法は抗がん剤の適応外使用による治療法のため、「特定臨床研究」に該当するので実際は垣根が高い。「診療」として実施する場合、特定機能病院では、倫理審査では無く、医療安全面からの導入プロセスが重要である。未確立の研究でありながら個別のケアとしての革新的手術手技として、高難度新規医療技術評価委員会にて術式を評価し、未承認新規医薬品等評価委員会にて薬剤の適用外使用を認可することで実施は可能と考える。特定機能病院以外においても「努力義務」として、各施設の状況に応じた適切な対応が求められる。HIPECは現在国内未承認の治療法であるため、原則として「研究」として実施することが推奨される。1.本治療法は抗がん剤の適応外使用による治療法のため、「特定臨床研究」に該当するので実際は垣根が高い。特定臨床研究=臨床研究法遵守しかない2.「診療」として実施する場合、2-1.特定機能病院なら;倫理審査では無く、医療安全面からの導入プロセスが重要である。未確立の研究でありながら個別のケアとしての革新的手術手技として、高難度新規医療技術評価委員会にて術式を評価し、未承認新規医薬品等評価委員会にて薬剤の適用外使用を認可することで実施は可能と考える。2-2.特定機能病院以外では;医療法の遵守は「努力義務」であり、厳密には2-1のような対応をしてなくても「医療法違反」にはならないため、各施設の裁量・判断に委ねられるのではないか。ただし、当然「努力義務」があるので、野放しではない。過失があれば大きな問題にはなると思われる。
    • HIPECセミナー HIPECにおける温度管理と術後管理

      片山寛次

      つくし野病院

      近年、欧米を中心に、腫瘍減量手術CRS+腹腔内温熱灌流化学療法HIPECは、欧米を中心に播種性腹膜転移性病変に対する 標準治療として有用性が明らかになっている。しかし,この組み合わせにおけるHIPECの有効性は、まだ証明されていないと考えられている。HIPECの有用性を議論するためには、HIPECの手技を標準化し、その質を評価できることが重要であると考える。そのために重要なこととして、以下の6つを挙げる。(1) 腹腔内を均一に加温する = 開腹法、又は腹腔鏡下加温が必要である。(2) 正確な温度測定を行うために、細径のCC熱電対温度センサーが有用である。(3) 腹腔全体を加温するために、横隔膜下やダグラス腔など、最も加熱しにくい腹腔内の温度を測定、記録すること。(4) TD43等を用いて加温の効果を数値化して、評価する。(5)シスプラチンやマイトマイシンなどの温熱増感の明らかな薬剤を標準薬として使用する。(6) 加温の程度に応じて安全な術後輸液と呼吸循環管理を行う。
  • 一般演題【臨床】

    • 生体情報モニタを用いたハイパーサーミア治療

      長瀨 英梨1)、大田 真1)、三浦 幸恵1)、灘吉 進也1)鞆田 義士2)、丸山 祐二2)、宮國 泰弘2)、谷 昴2)、今田 肇2)

      1戸畑共立病院 臨床工学科、2戸畑共立病院 がん治療センター

      【目的】ハイパーサーミア(以下HT)は,電磁波の影響により生体情報モニタの使用が避けられてきた.治療中に生体情報モニタが使用できれば,より安全な治療が可能となる.今回,HT中の生体情報モニタの使用について検討した. 【方法】フクダ電子社製生体情報モニタのベッドサイドモニタ(以下BM)DS-7141,セントラルモニタ (以下CM)DS-7640と送信機LX-5120の2機種を比較した.測定項目は,心電図,SpO₂,CO₂,非観血血圧.安全性試験として,HTにて寒天ファントムに100W30分間出力し,CM使用時の電極装着部温,BM使用時の電極装着部温を計測.その結果より,実験①健常男性に1300W30分間出力しCM使用時の心電図を測定.実験②健常男性に1300W30分間出力しBM使用時のSpO₂,CO₂,非観血血圧を測定. 【結果】安全性試験結果は,CM使用時の電極装着部温Tmax22.6℃,BM使用時の電極装着部温Tmax53.7℃.実験①CM使用時の心電図は測定可能.実験②BM使用時のSpO₂は測定不可,CO₂および非観血血圧は測定可能. 【考察】CMは,送信機が接地されていないため電極装着部温が上昇しないと考えられた.BMの電極装着部温の上昇は接地によるものと考えられ,臨床使用は火傷のリスクが高いことが示唆された.CO₂および非観血血圧は測定可能であったが,SpO₂は,フォトダイオードへの電磁障害により測定不可と考えられた.今回の結果より,HT中に生体情報モニタを用いて一部のバイタルサインを測定できる可能性が示唆された.
    • THERMOTRON―RF8 GR editionの加温要点について

      大田 真1),三浦 幸恵1),長瀨 英梨1),灘吉 進也1) 鞆田 義士2),丸山 祐二2),宮國 泰弘2),谷 昴2),今田 肇2)

      1 戸畑共立病院 臨床工学科,2 戸畑共立病院 がん治療センター

      【目的】 当院は山本ビニター社製治療装置2台を保有し,2021年2月,1台をTHERMOTRON―RF8(以下RF8)から GR edition(以下GR)へ更新した.今回,RF8とGRの出力と冷却効果について比較し,GRの加温要点について考察したので報告する. 【方法】 加温出力の評価として,RF8とGRの双方で治療を行った深部加温症例を無作為に抽出した(n=23).①開始から10分,②11~20分,③21分~30分,④31~40分,⑤41~50分のRF8とGRとの2群間を比較した.また,冷却効果においては寒天を用い,循環水温が30℃から3℃以下になるまでの時間と平均温度を計測した.なお,統計学的解析はStudent T-testを用い,p<0.05をもって有意差ありとした. 【結果】 RF8/GRで①797.8±305.1W/638.2±242.1W(p<0.01),②1009.9±224.5W/946.7±233.6W(p<0.05),③1075.8±212.1W/1075.9±224.7W(p=0.99),④1109.4±224.5W/1137.7±207.3W(p=0.45),⑤1124.2±225.9W/1171.3±210.6W(p=0.19).循環水温が3℃に到達するまでの時間ではRF8,GR共に11分で,その間の平均温度はRF8が4.19℃,GRで12.4℃であった. 【考察】 ①・②の結果より,GRは循環タンクが1つになり,水温が緩徐に低下する仕様で,平均温度が高くなり熱感頻度が増加し,RF8と比較し出力が低くなったと考えられた.GRでは開始20分までの時間帯において,水温を確認しながら出力調整を行うことが治療を行う上での加温要点として重要と考えられた.
    • ハイパーサーミアにおける輸液ポンプへの影響について

      三浦 幸恵1)、大田 真1)、長瀨 英梨1)、灘吉 進也1)、鞆田 義士2)、丸山 祐二2)、宮國 泰弘2)、谷 昴2)、今田 肇2)

      1戸畑共立病院 臨床工学科、2戸畑共立病院 がん治療センター

      【目的】サーモトロン-RF8(以下Th-RF8)の添付文書には,電磁波により医用電子機器及び本装置相互の機能に影響を及ぼす恐れがあると記されている.今回, 8MHzの電磁環境下における輸液ポンプへの影響について調査を行ったので報告する. 【方法】対象は無作為に抽出したテルモ社製汎用輸液ポンプTE-171 10台.電極部より30cmの位置にTE-171を配置し,Datrend Systems社製Infutest2000を用い,加温出力1300W下における 1.流量精度,2.閉塞圧,AD値(3.AC接続時電池電圧,4.バッテリー電池電圧,5.閉塞センサ下流,6.閉塞センサ上流,7.気泡センサ下流,8.気泡センサ上流)を計測し,平均値を求めた. 【結果】1.2.3±1.3%,2.53.5±7.4kPa,3.190.6±0.9,4.137.6±1.2,5.96.7±6.0,6.99.0±5.5,7.120.9±0.3,8.121.1±0.3. 【考察】山本ビニターは,Th-RF8の最大電界強度は電極部より25cmの位置において50.12V/m,1mの位置で22V/mと報告している.TE-171と電極部の距離を取ることにより,TE-171へ与える電磁波の影響は減衰すると考えられた.今回の結果より,TE-171はTh-RF8の8MHz電磁環境下において,安全に使用できると考えられた.
    • 疼痛緩和を目的とした生食パッド留置による体表面温度と深部温度への影響についての検討

      鈴木友香1)、村田朱1)、菅沼江奈美1)、坂神友美佳1)、三須義直1)、山本和也1)、沢井博純2)、成田真3)

      1成田記念病院放射線部 2成田記念病院外科 3成田記念病院消化器内科

      【背景・目的】 当院では2019年10月よりThermotronーRF8 GR editionを導入し、温熱治療を行っている。 深部領域の加温を行う際、体表面の局所的な疼痛緩和のため、手入れやエコーゼリーの塗布に加え生食パッドを疼痛部分に留置する場合がある。 通常深部加温においてオーバーレイボーラスにより体表面は冷却されていくが、生食パッド留置時の体表面温度と深部温度に対して生食パッドの留置が与える影響について検証した。 【方法】 30×20×30cmの筋肉等価ファントム(寒天ファントム)をオーバーレイボーラスと直径30cmの電極ではさみ 一定の出力(500W )で40分間加温、循環水温度は35℃から5℃に冷却し、ファントム表面温度と深部温度を経時的計測した。 生食パッド有りと無しの場合で各測定点の温度変化を比較した。 【結果・考察】 生食パッドを留置した場合でも深部の温度に大きな差は見られなかった。表面温度は生食パッド下の温度低下がオーバーレイ 直下よりも緩やかになり、同温度に下がるまで約2倍の時間を要し,加温終了時の温度差があった。 深部領域の加温において、生食パッドを留置した場合としない場合で深部温度に差は無く、疼痛緩和目的で厚さ1cm程度の生食パッド使用しても深部温度に影響はないと考える。体表面温度の低下率に差があるため、患者様への熱感についての検証が必要である。 【結語】 今回用いた生食パッドでは深部温度に影響は見られないと示唆された。
    • ハイリスク前立腺癌に対する癌温熱治療(ハイパーサーミア)の役割

      河合憲康1)、永井隆1)、冨山奈美1)、清水伸彦1)、磯部輝紀1)、野田祐介1)、飯田啓太郎1)、 惠谷俊紀1)、内木拓1)、山田健司1)、畦元将隆1)、吉田亮人2)、安井孝周1)

      1名古屋市立大学大学院医学研究科腎泌尿器科学分野、2 医療法人メドック健康クリニック

      【目的】8MHzのラジオ波温熱治療器による癌温熱治療は1990年に放射線治療との併用で、1992年には温熱治療単独で固形癌に対する治療として保険収載された。しかし、泌尿器科医にはほとんど認知されていない。癌温熱治療が泌尿器科医に認知されるよう、ラジオ波温熱治療器によるハイリスク前立腺癌治療における役割を検証する。 【対象と方法】対象は2014年4月から2020年5月までにラジオ波温熱治療器による癌温熱治療を施行したハイリスク前立腺癌の4例について後向に治療効果を検討した。 【結果】癌温熱治療には8MHzラジオ波温熱治療器を用いた。3例はGleason’s score 8以上の腺癌(T2cN0M0)、1例は小細胞癌(T4N1M0)であった。腺癌の3例は強度変調型根治的放射線治療 (IMRT)、小細胞癌の1例では右外腸骨リンパ節転移を含む骨盤内照射を実施。放射線治療と並行して癌温熱治療を週1回を6コース実施。放射線治療後は月2〜3回で継続した。腺癌の3例は治療開始後から6年経過するが再発は認めていない。小細胞癌の1例は右外腸骨リンパ節転移と前立腺癌が膀胱へ浸潤し尿閉と両側水腎症を来していたが、放射線治療と癌温熱治療6回終了後は画像上CRとなり、自排尿も可能となった。半年後に膵頭部に転移をきたし、閉塞性黄疸を呈した。同部位に放射線治療と癌温熱治療を行い転移巣も縮小し生存中である。p53の変異、温熱治療に関連するタンパク質(HSP70, HIKESHI, HSF1)についても治療前後の生検組織で評価した。 【結論】肺癌、肝臓癌などでは前向き研究で抗癌剤や放射線治療との併用により治療効果が示されている。前立腺癌についてGleason’s score8以上の腺癌や小細胞癌には放射線治療とラジオ波癌温熱治療の併用も有効であることが示唆された。
    • 頸部領域における表面温度測定とシミュレーション予測温度との関連性

      田中麻香1、高仲 強2、高 将司2、川原 昌宏1、野尻 智子1、則島 あずさ1、 山下 国子3、

      1.厚生連高岡病院 画像診断部、2. 厚生連高岡病院 放射線治療科、 3.厚生連高岡病院 看護部、

      【はじめに】温熱療法では腫瘍内の温度上昇が必要だが、腫瘍内の温度測定は困難である。そこで今回我々は頭頚部腫瘍を対象に、装置に付属した温度センサを皮膚表面に貼付し、温熱療法中に測定された皮膚面実測温度とサーモシミュレータで予測された温度を比較することによって、皮膚面実測温度から腫瘍内温度の予測を試みることを目標とした。【対象・方法】当院で温熱治療を完遂された頸部腫瘍3症例の治療時の測定データを用い、アスクーフ8のサーモシミュレータへ5分ごとに実入射W数および実反射W数を入力し、腫瘍内温度の予測を行った。皮膚面実測温度とサーモシミュレータで予測された腫瘍内温度を比較した。【結果】症例1の最大実測温度は40.6℃、腫瘍内予測温度は45.26℃、症例2の最大実測温度は39.0℃、腫瘍内予測温度は45.20℃、症例3の最大実測温度は38.4℃、腫瘍内予測温度は41.64℃となり、3例全てで予測温度の方が高く示された。【考察・結論】シミュレーションでは予測温度が高く示される傾向にある。実測温度が40℃前後となるような実効W数をもって治療を行えば、腫瘍内温度は42.5℃以上に上昇していると考えられる。よって、実測温度を40℃まで上昇させるように加温を行えば、腫瘍内は充分に加温されると考えられる。
    • 生存率向上を目指したハイパーサーミアを併用した切除後膵癌の術後補助化学療法

      柳橋浩男1)、千葉聡1)

      1千葉県がんセンター 肝胆膵外科

      膵癌は悪性度が高く、根治切除を達成しても早期再発しやすく、その予後は不良である。 膵癌は一般的に乏血性腫瘍であり、ハイパーサーミアにより効果的な温熱効果が期待できるとされている。 膵癌は再発すると根治が難しく、化学療法の効果も限定的で全身状態は悪化し、化学療法の継続も困難となることが多い。 術後補助化学療法としてS-1が標準化され生存率向上に寄与しているが、その予後はまだ満足いくものではない。 再発治療よりも術後補助化学療法は継続しやすく、根治切除後で標的病変はないがハイパーサーミアを併用することでS-1の抗腫瘍効果を増幅させ、さらなる生存率の向上を期待できる。 当院では2020年10月よりハイパーサーミアが導入され、臨床稼動が開始されている。 膵癌は年間30例程度の切除例があり、術後補助化学療法はS-1が標準化されている。 S-1は2投1休で6か月間であり、ハイパーサーミアはday 7,14に合計16回を腹部に施行している。現在5例を施行し、ハイパーサーミア関連の合併症はみられておらず、S-1に併用は可能である。 S-1投与とハイパーサーミアの施行方法はまだ手探りではあるが、長期予後の向上を目指して継続していく。
    • PARP阻害剤と併用し有効性が認められた前回報告例とは別の卵巣癌の1例

      加藤泰規1) 北野晶之 1) 水村桂子 1) 北野 彩 1) 岡本寛也 1)

      1) 医療法人社団 加音 瀬田西クリニック

       前回大会で我々はPARP阻害剤によるPARP経路阻害とハイパーサーミアによるBRCA2分解促進からの遺伝子修復阻害の相乗効果を期待できると考え症例報告を行った。残念ながらその症例はその後オラパリブの影響が疑われる胆管炎を発症し、中途リタイアとなってしまった。しかしその後たまたまPARP阻害剤治療中の別の卵巣癌患者の治療に関わる機会を得たので治療経過を報告する。  患者は40歳女性。卵巣癌腹膜播種にて中核病院で2018年11月に子宮両側付属器切除、直腸低位前方切除、腹膜切除を施行された。術後化学療法(TC療法)を施行されたが2019年6月に肝下面に再発を認めたためTC+Bev療法を施行し一旦消失を認めた。しかし2020年6月に同部に再再発を認めたために、再度同化学療法を行った後、再手術を予定された状況で2020年7月に当院を受診された。当院では同年8月から再発部に対して温熱治療を開始した。同年10月まで化学療法を行われ、同時期のCTで腫瘍の縮小を認めたため手術は延期となり、化学療法からPARP阻害剤の投与へ治療変更となった。2021年1月のCTでは継続的に腫瘍は縮小傾向を示していた。  卵巣癌ではTC療法に感受性のあるケースではPARP阻害剤の適応となる。本症例ではTC療法との併用で温熱治療を開始し、治療途中でPARP阻害剤へ併用治療が変更となったケースであるが、治療内容変更後も継続的に効果が認められており、PARP阻害剤と温熱治療の併用治療で有効性が認められた症例を複数経験し得たことは貴重なことであると考えられた。
    • 再発卵管癌に対して温熱療法導入によるパフォーマンスステータスの改善を示した1症例

      寺口 博也¹、御供田 真駿¹、黒崎 杏奈¹、鈴木 栄子¹、大島 華奈子¹、高木 弘明³、 笹川 寿之³、坂本 人一³、能登 稔¹、齋藤 麗奈¹、中出 忠宏¹ ²

      1 金澤なかでクリニック 2 なかでクリニック 3 金沢医科大学病院 産科婦人科

      【諸言】  再発癌は、多くの症例で根治が難しく、癌の進行を抑える治療が主眼となる。今回、原発性卵管癌3B期の再発を呈する患者に対して、温熱療法(ハイパーサーミア:以下HT)を導入し、パフォーマンスステータス(以下、PS)の改善を示した症例を経験したので報告する。 【症例】 73歳、女性。 【現病歴】  X-7年 左卵管癌、癌性腹膜炎(pT3b NX MX, high grade serous carcinoma)につき 腹式子宮全摘出+両付属器摘出術+大網部分切除、術後パクリタキセル+シスプラチン療法(以下、TP療法)を施行した。X-5年 傍大動脈リンパ節転移、腹膜播種を再発し、化学療法・放射線治療同時併用療法を行い、部分寛解を得た。X-2年 腹膜播種により十二指腸狭窄を認め、TP療法を再開、中心静脈栄養(以下、TPN)を行った。その後も腫瘍マーカーの上昇、腹膜播種病変の増悪、PSの低下を認めた。X年4月 腹膜播種、PSの改善を期待し、HT施行のため当院を紹介受診した。 【臨床経過】  HT開始前は、食欲不振、腹部不快感、下痢、倦怠感が強い症状で、TPNを繰り返し、半年間で体重が10kg減少していた。HTを骨盤腔に熱量550-740W(測温:約40℃)治療時間40分を週1回より開始し、1クールの6回目から下痢が普通便になり、倦怠感が軽減した。HT 1クール終了後、食欲が増し、Hbは9.4 g/dLから11.0 g/dLへ増加し、倦怠感の症状も軽減、PSは2から0へと改善した。また、腫瘍マーカーCA125は154.8 U/mLから68.3 U/mL CEAは8.6 ng/mLから3.5 ng/mLへ顕著に低下した。 【考察】 HT単独により、抗腫瘍効果の増強が示された。PS改善は、腹膜播種病変の改善、消化管狭窄の改善に伴う腹水や栄養状態の改善による影響が考察される。 【まとめ】  HT 単独1クールにおいてPS改善と顕著な腫瘍マーカーの低下を示した症例を経験した。
    • 直腸癌多発転移に対する温熱治療の有効性

      森信二1):出口葉子2):出口雅彦2)

      1医療法人あいん会 温熱治療センター、2医療法人あいん会 あいん常澄医院

      【はじめに】2019年の死亡数が多い癌の部位において、男性3位、女性1位、男女計においては肺癌の次に大腸癌は多くなっている。その大腸癌はステージⅣだと5年生存率は約18~19%だと言われている。今回、我々は温熱治療を長期間継続して良好な結果を得ている症例を経験しているので報告する。 【症例1】60代 男性 2008年10月:直腸Rsに環周率約45%の2型腫瘍を認める。肝臓S7に3cm大の直腸癌による肝転移を認める。 2008年11月:直腸癌・肝転移切除術術後、半年間、FOLFOX6を1週間毎に施行。開始から3ヶ月辺りから副作用のため、立つことも不自由になる。最終的に6ヶ月施行されて、抗癌剤は終了し、経過観察となる。 2011年09月:肝転移1か所切除 2011年11月:肺転移1か所切除 2012年03月19日に当院を受診して、温熱治療を1回/2週のペースで開始する。 2013年10月:肺転移1か所切除 2013年10月~12月は、温熱治療中止 2014年01月より温熱治療を1回/2週のペースで再開 現在、温熱治療を 1回/3週 で継続 温熱治療回数:178回  治療期間:約9年(2021年06月10日現在) *現在、転移も新しい癌の発症も無く、温熱治療を継続している。 【症例2】70代 女性 2008年06月23日:直腸癌 放射線治療開始20回(50Gy)+TS-1開始、温熱治療(2008年9月4日~週1回)計7回施行 2008年09月24日:手術(同時にストーマ造設) 2009年08月04日:PET検査にて肺転移が見つかる 2009年08月28日~治療開始:温熱治療127回 (週1回)+ FOLFOX (1回/3週) 2012年03月11日:あいん会温熱治療センターに紹介 2012年03月12日:温熱治療を 週1回 で開始 2012年04月02日:抗癌剤治療開始 アバスチン・レボホリナート・エルプラット (1回/2週) 2013年01月24日:抗癌剤変更(副作用の為)トポテシン20に変更 2013年05月:抗癌剤終了(副作用の為) 2013年06月03日~18日:放射線治療 8回  現在、温熱治療を 1回/2週 で継続 温熱治療の総回数:127+390=517回 治療期間:約13年(2021年06月10日現在) *現在、転移も新しい癌の発症も無く、温熱治療を継続している。 【結果】温熱治療を長期的に継続している症例は少ないと思われるが、今回の結果より、直腸癌のステージⅣでも10年以上再発すること無く、他の癌も発症すること無く、患者自身も「継続していると体調も良く、安心して日々の生活を送ることが出来る。」と、自ら希望して治療を受けている。これは、他の癌治療には無い、温熱治療の特徴であり、有効性だと考える。
    • 大腸癌腹膜播種に対するCRS+HIPECにおける予後規定因子の検討

      森川充洋1),嶋田通明1),田海統之1),呉林秀崇1),澤井利次1) ,小練研司1),玉木雅人1),村上 真1) ,廣野靖夫2),片山寛次3),五井孝憲1)

      1)福井大学第一外科、2)福井大学がん診療推進センター、3)つくしの病院外科

      【背景】大腸癌腹膜播種は予後不良な病態であるが,海外ではCytoreductive surgery(CRS)+Hyperthermic Intraperitoneal Chemotherapy(HIPEC)を施行する施設が増えており良好な成績が報告されている.NCCNガイドライン,等の海外のガイドラインではR0手術が可能な症例は専門的な施設で同治療が検討されると記載されているが,同治療の予後規定因子に関する報告は少なく,当科の症例により後方視的に検索する. 【方法】1990年3月から2017年12月の間にCRS+HIPECを施行した大腸癌腹膜播種42例を対象とした(3年以上の予後が追跡し得た症例).検討因子は,①年齢②性別③原発部位(右or左側)④組織型(高or低分化)⑤リンパ節転移の有無⑥播種以外の遠隔転移の有無⑦同時性or異時性⑧P分類(P1+2 or P3)⑨PCI(8未満or8以上)⑩CCS(0-1 or 2-3)⑪化学療法抵抗性 (化学療法施行し増悪中に手術した症例)の有無⑫術後合併症(CD分類Grade3以上)の有無,とした.上記因子と全生存期間(OS)でCox比例ハザードモデルによる単変量・多変量解析を行い,予後規定因子を検索した.OSの算出はKaplan-Meier法で行い,OSの比較はLog-lank検定を用いP<0.05を有意差ありとした. 【結果】単変量解析の結果で有意な予後不良因子となったのは,P3(HR:3.703,P=0.016),PCI8以上(HR:2.919,P=0.007),CC2-3(HR:6.344,P=0.000),化学療法抵抗性あり(HR:3.155,P=0.015),術後合併症あり(HR:3.005,P=0.020)の5項目であった.その5項目で多変量解析を行うと,有意な予後不良因子はCC2-3(HR:5.353,P=0.004)であり,最も重要な因子は完全減量切除(CC0-1)を施行し得ることと考えられた.CCSの生存曲線では,CC0-1の3年OS:60%,5年OS:46.7%,MST:44.5か月であり,CC2-3の3年OS:8.3%,5年OS:0%,MST:11か月と比較し,CC0-1の予後が有意に良好であった(P=0.000). 【考察】大腸癌腹膜播種に対してCRS+HIPECを行う場合は,予後の延長のためにCC0-1を目指すことが重要と考えられた.またP1-2,PCI低値,化学療法抵抗性がない,術後合併症を来さないことが,CC0-1と関連する予後規定因子と考えられた.
    • 腹膜播種に対する温熱化学療法の効果

      米村豊1)、鍛外幸1)、片山寛治1)、劉洋1)、石橋治昭1)、左古昌蔵1)、若間聡史1)、鎌田泰之1)、池田聡2)

      1 岸和田徳洲会病院、2 池田病院

      温熱化学療法HIPECの効果については不明な点が多い。我々は腹腔鏡下温熱化学療法を行い直接効果をしらべるとともに、胃癌腹膜播種に対するHIPECの予後に及ぼす効果も検討した。 方法;腹膜播種を有する胃癌(N=55)大腸癌(N=33)、虫垂癌(N=93)、中皮腫(N=8)に腹腔鏡下HIPEC(LHIPEC)を行い、1か月後に再度腹腔鏡を行い腹膜播種係数(PCI)を比較した. 胃癌腹膜播種269例に術前腹腔内・全身化学療法(NIPS)を3コース行い、完全sつじょ可能と考えられた239例を開腹、腹膜切除した後HIPECを行う119例(HIPEC群)とHIPECを行わない(非HIPEC群)に分け、生存率を検討した(RCT)。 結果;PCIは胃癌で13.5±11.0から11.6±10.7、虫垂癌で8.2± 8.5から6.6±9.4、中皮腫では27.1±11.1から27.2±17.9と有意に低下した。一方、大腸癌では10.4±12.7と有意差はないが増加した。大腸癌で効果がなかった理由は大長癌の播種が直径5mm以上の例が多いためと推察された。 RCTでは手術時間がHIPEC群では有意に長かったが、2群間の臨床病理学的因子に差はなかった死亡率はHIPEC 群2.5%、非HIPEC群1.7%、Grade 3,4の術後合併症は20.7%、26.8%で差はなかった。MSTはHIPEC17.6月、非HIPEC15⃣.6月、5生率は16,4%、6.7%と有意にHIPEC群が良好であった。 結論 HIPECは胃癌・虫垂癌・中皮腫の播種を有意に減少させるが、大腸癌では効果がなかった。胃癌腹膜播種の遺残腹膜播種の治療にHIPECは有効である。
    • 当院におけるオーバーレイボーラスの導入後の治療に関する報告

      二村雄飛 今村麻衣 栗本拓也

      医療法人偕行会 名古屋共立病院 ハイパーサーミアセンター

      当院では2020年10月から、オーバーレイボーラス(以下OLB)を使用した深部ハイパーサーミア治療を行っている。OLBは冷却水循環型電極を使用した治療と比較して、エッジ効果や熱感を抑えることができるため、冷却水循環型電極を使用した治療よりも出力を上げることができると予想される。今回は当院での治療成績について報告する。 当院で冷却水循環型電極を使用して深部ハイパーサーミア治療を行っていた23例に対して、OLBを使用したところ、17例の患者に出力の向上がみられた。またこの23例の患者に対して、冷却水循環型電極を使用した治療と比べて疼痛や熱感がどのように変わったのかアンケートを行った結果、疼痛が悪化した例は1例のみで、23例中13例で疼痛が緩和された。熱感が悪化したものはなく、23例中17例に熱感が軽減された。 OLBを使用した治療は疼痛や熱感の軽減を実感する意見が多く、実際に出力も向上した。その一方で疼痛や熱感が増強し、出力が低下する例もあった。出力低下した患者の特徴としてBMIが高いこと、治療部位が脂肪の多い骨盤部であることが挙げられる。そのため、OLBはエッジ効果や密着度不良が起因する疼痛や熱感に対して出力の向上は期待できるが、脂肪が原因である場合は改善されないことがあり、出力が低下したと推察される。
    • アスクーフ8による温熱療法が有用であった切除不能甲状腺癌の1例

      大田 政廣1、阿部 美由紀2、東海林 美沙2、吉田 麻美2、岡崎 雅3

      1.天童温泉篠田病院 外科、2.天童温泉篠田病院 臨床工学室、3.山形大学医学部 耳鼻咽喉・頭頸部外科学講座

      症例は68歳男性。2018年1月に左頚部の腫瘤に気づいていたが放置。同年11月、腫瘤が増大してきたため病院を2ヵ所受診し、いずれも切除不能甲状腺癌の診断であった。このため12月よりがん拠点病院にて化学療法が開始されたが、手足症候群や腫瘍の自潰等の有害事象出現のため化学療法を中断。2019年5月に温熱療法のため当科へ紹介された。左頚部に15×10㎝の腫瘤を認め、2ヵ所が自潰し出血していた。CTでは左頚部顎下部から左縦隔に進展する巨大な腫瘤があり、下咽頭・気管は右方へ圧排され、左内頚動脈は腫瘤内に埋没し、左内頚静脈は腫瘍に圧排され内腔は閉塞していた。StageⅣAの診断にて5月31日から週1回400~600W・40分で温熱療法を開始し、6月7日よりレンビマ8㎎(通常投与量の1/3量)を1日1回連日投与とした。また、6月23日より20㏉の短期照射を行った。これらの治療により腫瘤の縮小傾向がみられるようになり現在はほぼ消失している。甲状腺癌は比較的予後の良好な癌とされているが、再発・進行癌の治療は困難な事が多い。今回、温熱療法に低線量放射線・低用量化学療法を併用し、腫瘤の縮小をみた1例を経験したので若干の考察を加え報告する。
    • 切除不能な局所進行下咽頭癌に対する温熱療法併用化学放射線治療が奏功した1例

      谷 昴1)、板村 紘英1)2)、森崎 貴博1)2)、宮國 泰弘1)、丸山 祐二1)、鞆田 義士1)、大栗 隆行1)2)、今田 肇1)

      1) 戸畑共立病院 がん治療センター、2) 産業医科大学病院 放射線治療科

      【目的】切除不能な局所進行下咽頭癌に対する標準治療は化学放射線治療であるが、とくにⅣA-B期症例では5年生存率5-30%、局所制御率0-40%程度と予後不良である。今回、我々は切除不能局所進行下咽頭癌c T4bN3bM0、ⅣB期に対し化学放射線治療に温熱療法を併用し、良好な腫瘍制御を得られた1例を経験したので報告する。  【症例】60歳代男性、左梨状陥凹を主体とし椎前筋に浸潤する48mm大の腫瘤を認め、生検で扁平上皮癌の病理診断となった。右頚部に長径84mm大、左頚部に長径18mm大の巨大なリンパ節転移を認め、病期はcT4bN3bM0、ⅣB期と診断した。切除不能な局所進行下咽頭癌として根治的化学放射線治療を行う方針としたが、腫瘍による通過障害が強く全身状態不良であったため、まずは導入化学療法(セツキシマブ(400mg/m2)/パクリタキセル(60mg/m2))を行い、同時に3回の温熱療法を施行した。温熱療法は巨大なリンパ節転移のある右頚部領域を中心に、容量加温装置を用いて腹側7㎝、背側21㎝径の電極で50分間の加温を行った。初回に右頚部リンパ節転移を穿刺、温度センサーを挿入して測温を行い、腫瘍内温度43-46℃の良好な加温が得られていることを確認し、2回目以降は初回と同程度の表面温度となるように調整した。導入化学療法+温熱療法が奏効し、腫瘍縮小および全身状態改善が得られたため、根治的化学放射線療法としてhigh dose FP(シスプラチン(70mg/m2)/フルオロウラシル(700mg/m2))と放射線治療(72Gy/60fr, 1回1.2Gy、1日2回照射)を開始し、治療期間中に温熱療法18回と高気圧酸素療法21回を行った。治療中に腫瘍径の縮小を認め、電極の密着性をより高めるため計3回目より左右加温(電極径は右側7㎝、左側14㎝)に変更して治療を継続、完遂した。治療終了から3か月後の治療評価CTと内視鏡検査では原発巣および左頚部リンパ節転移はCR、右頚部リンパ節転移はPRの治療効果を得られた。その後、治療後維持療法としてNivolumab(240mg/body)を導入し、右頚部リンパ節転移も縮小しCRとなった。治療半年後の画像評価でも原発巣、リンパ節転移ともにCRを維持しており、治療開始1年後の現在では職場復帰までされている。 【結語】下咽頭癌ⅣB期に対する導入化学療法およびそれに続く根治的化学放射線療法に温熱療法を併用し、良好な腫瘍制御を得られた1例を経験した。
  • 一般演題【基礎】

    • HeLa細胞におけるWee1阻害剤と温熱の併用効果

      古澤 之裕

      富山県立大学・工学部・医薬品工学科・バイオ医薬品工学講座

      DNA損傷応答経路は,センサー分子であるATMやATRが細胞死や細胞周期に関連する分子の機能を修飾する機構であり、熱ストレスによって活性化する事が知られている。以前我々は、ATR下流のChk1およびATM下流のChk2が、温熱によるG2/Mアレストと細胞生存に関与していることを報告した。一方、細胞周期の進行調節にはChk1/2以外にも数多くの分子が関与しており、他の分子が温熱療法の分子標的となりうるか不明な点が多い。ここでは、細胞周期の調節分子であるWee1に着目し、Wee1阻害剤がHeLa細胞の温熱誘発細胞死を増強するか検討した。
    • ヒト口腔扁平上皮がん細胞のHikeshiの発現と温熱感受性との間における関連性

      田渕圭章1),柚木達也2),平野哲史1),林 篤志2)

      1富山大学研究推進機構遺伝子実験施設 2富山大学大学院医学薬学研究部(医学)眼科学講座

      【目的】熱ショックタンパク質 Hsp70の核輸送タンパク質であるHikeshiの機能阻害は,温熱感受性を増強することが示されている.今回,種々のヒト口腔扁平上皮がん (OSCC) 細胞においてHikeshiの発現と温熱感受性との間に関連性があるか否かを検討した. 【方法】HSC-3細胞含む11種類のOSCC細胞を用いた.細胞を42-44℃で90分間処理後,37℃で一定時間培養した.細胞生存率を指標にして温熱感受性を評価した.遺伝子とタンパク質の発現は,各々qPCRとウエスタンブロット法を用いて定量した. 【結果】11種類のOSCC細胞の全てにおいてHikeshiのmRNAとタンパク質が検出でき,これらの間には有意な正の相関 (R=0.804) が観察された.42-44℃の温熱負荷を用いた実験から,各々の細胞の温熱感受性を明らかにした.しかしながら,Hikeshiの発現と温熱感受性との間には相関性は認められなかった.一方で,HSC-3細胞において,Hikeshiのノックダウンは温熱によるHsp70の核内移行を阻害し温熱感受性を上昇させた. 【結語】OSCC細胞においてHikeshiは温熱感受性に関与するタンパク質であるが,その発現レベルと温熱感受性との間には関連性は認められなかった.
    • カーボンナノホーン-酸化鉄ナノ粒子複合体(CNH-IONP)の調製と特性解析

      堤内要1)、上野左京1)、島岡桃子1)、菅原祐人1)、猪飼誉友1)、今井律子1)、今栄東洋子2)、永井隆3)、河合憲康3)

      1 中部大学応用生物学部、2 Graduate Institute of Applied Science and Technology, National Taiwan University of Science and Technology、3 名古屋市立大学大学院医学研究科 腎・泌尿器科学分野

       我々は既にカーボンナノホーン(CNH)と酸化鉄ナノ粒子(IONP)との複合体(CNH-IONP)を調製し、抗がん剤を内包・徐放できるとともに、交流磁場照射で発熱もできることを報告してきた1。このCNH-IONPを用いてがん温熱療法の実験を検討してゆく計画であったが、数多くの実験を同じ試料で実施するために、グラムスケールで複合体の調製を試みたところ、安定した発熱特性が得られないという問題が生じてしまった。そこで、本研究ではより簡便な調製方法の検討を行った。共沈法で調製したIONPを3-アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)で表面修飾し、粒子表面にアミノ基を導入した。次に、CNHのカルボキシ基とのアミド形成反応によって、新たなCNH-IONPを調製した。赤外線吸収(IR)スペクトルや熱重量(TG)測定、動的光散乱(DSL)、透過型電子顕微鏡(TEM)観察、エネルギー分散型X線(EDX)分析などによってCNH-IONPの特性解析を行い、さらに、交流磁場照射条件下における発熱挙動との相関についても検討したので報告する。 1 N. Kawai et al., Thermal Med., 35 (Suppl.), 116 (2019).
    • 去勢抵抗性前立腺癌モデルマウスに対するカーボンナノホーン-酸化鉄ナノ粒子複合体(CNH-IONP)を用いた温熱療法効果の検討

      永井 隆1)、河合憲康1)、堤内要2)、上野左京2) 、島岡桃子2)、菅原祐人2) 、猪飼誉友 2)、今井律子2)、今栄東洋子3) 、安井孝周1)

      1. 名古屋市立大学大学院医学研究科腎・泌尿器科学分野 2. 中部大学応用生物学部応用生物化学科 3. Graduate Institute of Applied Science and Technology, National Taiwan University of Science and Technology

      【緒言】 去勢抵抗性前立腺癌は薬物療法や放射線療法などにより治療されるが、治療抵抗性が高く実臨床での課題の一つである。そこで、私たちは新たな治療選択肢として去勢抵抗性前立腺癌に対する温熱療法に着目し、研究を行ってきた。酸化鉄が交流磁場下に発熱する特性を利用し、腫瘍部位のみを加温し温熱療法を行うものである。今回、中部大学・台湾科学技術大学と共同で、カーボンナノホーン(carbon nanohorn:CNH)および酸化鉄ナノ粒子(iron oxide nanoparticle: IONP)が結合した新規のナノ粒子を開発し、去勢抵抗性前立腺癌モデルマウスに対する温熱治療効果の検証を行ったので報告する。 【方法】 モデル動物として去勢抵抗性前立腺癌皮下移植モデルマウスを用いた。6週齢雄ヌードマウスの背部にヒト去勢抵抗性前立腺癌細胞株 22 Rv1を皮下移植した。皮下移植後、3週間(day21)経過時点で、コントロール (n=3) および加温群 (n=3) とし、加温群のモデルマウス腫瘍部位にCNH-IONP (Fe濃度:36.3mg/ml)を300μL腫瘍部分に局所注入した。その後、コイル型交流磁場照射装置を用いて、交流磁場下におけるCNH-IONPの発熱による温熱療法を試みた。腫瘍内の温度は、いわゆるmild hyperthermiaで定義される42℃-46℃で維持し、30分間の加温を行った。両群の経時的な腫瘍サイズの計測を行い、温熱治療効果の検証を行った。 【結果】 マウス1においては温度上昇が緩やかであり、温度上昇も42℃程度とやや低めであったが3匹とも42℃以上を維持できた。なお、温度経過はサーモグラフィー(FLIR C5)を用いて測定した。治療群では、麻酔により一匹死亡した。コントロール群では経時的な腫瘍サイズ増大を認めるのに対し、治療群では腫瘍縮小を認めた。皮下移植モデルマウスにおいて、CNH-IONPを用いた磁性ナノ粒子を用いた交流磁場下の発熱で温熱治療効果が確認された。 【結論】 CNH-IONPによる去勢抵抗性前立腺癌温熱治療効果の検証を行った。今回開発したCNH-IONPは交流磁場下で発熱し、腫瘍退縮効果があることが明らかになった。
    • ヒト口腔扁平上皮がん細胞に対する抗がん剤および過酸化水素とマイルドハイパーサーミアの併用効果

      田川裕也1)、坂上宏2)、天野滋2)、友村美根子3)、坂東健二郎4)、高尾浩一5)、杉田義昭5)、植沢芳広6)、山本信治1)、坂下英明1)、中鍛治里奈7)、小泉敏之8)、光藤健司8)、藤内祝3)

      1)明海大学歯学部口腔顎顔面外科学分野 2)明海大学歯科医学総合研究所 3)明海大学保健医療学部 4)明海大学歯学部生化学 5)城西大学薬学部生物有機化学 6)明治薬科大学医療分子解析学研究室 7)横浜市立大学大学院医学研究科循環制御医学 8)横浜市立大学大学院医学研究科顎顔面口腔機能制御学

      目的:ハイパーサーミア(HT)は、口腔がんの治療に保険治療として認められており、放射線療法や化学療法と併用して行われる。口腔がんにおいては手術が標準治療である術後の機能障害や審美障害が問題となる。そこで低侵襲治療法の一つとしてHTに着目した。今回、マイルドハイパーサーミア(mild HT, 41℃)の効果的な臨床応用を目指し、in vitroにおいて、HTに感受性の高い細胞の探索、抗がん剤との併用効果、様々な代謝反応の過程で生成される過酸化水素の関与の可能性について検討した。 方法:HT専用AS ONE CO2 Incubator E-22を用いて、口腔扁平上皮がん細胞(Ca9-22, HSC-2, HSC-4)に対するCDDP (1-75 μM), DOC (1-50 nM), 5-FU (4-1000 μM)、過酸化水素(1-10 mM)の効果を口腔正常細胞(歯肉線維芽細胞、歯根膜線維芽細胞),骨髄性白血病細胞(HL-60, ML-1)、肺がん細胞(A549, WA-hT, A904-L)と比較検討した。結果:① Mild HTは、暴露時間が24時間以内であれば、ほとんどの培養細胞、特に、口腔正常細胞に対する侵襲性が弱いこと、暴露時間を48時間まで延長すると、特に口腔扁平上皮がん細胞と骨髄性白血病細胞は、肺がん細胞よりも、顕著に増殖が低下すること、②DOCの口腔扁平上皮がん細胞に対する傷害性は、45分のmild HTにより増強された。温度が42~43℃まで上昇すると、有効なHT処理時間が短縮した。CDDPは、若干の増強効果を示したが、5-FUの増強作用は観察されなかった。③過酸化水素の細胞傷害活性は、45分~1時間 mild HTにより、顕著に増大した。考察:今回の実験結果は、口腔がんの頸部転移に対するHTは45から50分を目標に行われていることと合致する。また、Mild HTによる抗がん剤の作用増強における過酸化水素の関与が示唆された。
    • ISM帯マイクロ波による温熱療法は熱ショックタンパク質非依存的に抗腫瘍作用を示す

      藤本えりか1)、永根大幹1)、金井詠一2)、柴田悠貴1)、中村 靖彦3)、岸和寿4)、山田一孝5)、山下匡1)

      1 麻布大学獣医学部生化学研究室、2 麻布大学獣医学部小動物外科学研究室、3 シュナイドテック株式会社、4 麻布大学獣医学部獣医放射線学研究室、5 麻布大学獣医学部臨床診断学研究室

      【背景】 温熱療法はがん治療の補助療法として知られており、タンパク質の変性作用により抗がん作用を示す。従来の温熱療法では8 MHzのマイクロ波が治療応用されており、組織深部への加温が可能であるが、加温に長時間を要する。そこで本研究では、体表面の加温に適したISM帯(2.45 GHz)マイクロ波照射装置を開発し、その温熱治療効果について検討した。また、ISM帯マイクロ波による細胞障害に関する分子機構を検討した。 【材料と方法】 マウス黒色腫B16F10細胞を使用した。細胞の加温には42℃の恒温槽またはISM帯マイクロ波照射装置を使用した。細胞生存率はコロニー形成法により解析した。B16F10細胞をC57BL/6Nマウスの足底部に移植し恒温水槽(42℃)による加温またはISM帯マイクロ波照射を実施した。治療効果は腫瘍体積およびKaplan-Meier法により解析した。HSF1およびHSP40/70の遺伝子発現およびタンパク質発現は、RT-qPCRおよびウエスタンブロッティングで解析した。 【結果】 恒温槽では23℃か ら42℃までに約30分の加温が必要であったが、ISM帯マイクロ波では約40秒であった。B16F10細胞を用いて細胞障害作用を検討したところ、恒温槽のIC50 は80分であり、ISMマイクロ波のIC50 は 35秒であった。B16F10移植腫瘍モデルにISMマイクロ波を照射したところ、腫瘍増殖抑制効果とアポトーシス誘導作用が観察された。熱耐性に関わるHSP40/70の遺伝子発現およびタンパク質発現を解析したところ、恒温槽による加温ではHSP40/70が増加したが、ISM帯マイクロ波ではHSP40/70発現の増加が抑制された。HSPの転写因子であるHSF1のタンパク質発現を解析したところ、恒温槽ではHSF1の高リン酸化による分子量の増加が観察されたが、ISMマイクロ波では分子量の増加が有意に抑制された。予備加温によりHSPsを誘導した細胞に対しての細胞障害作用を検討したところ、予備加温は恒温槽による加温に対して細胞保護作用を示したが、ISMマイクロ波には保護作用を示さなかった。 【考察】 ISM帯マイクロ波による温熱療法は短時間で治療温度まで加温することが可能であった。また、ISMマイクロ波による温熱治療はHSPsの誘導性が低く、HSPが誘導された熱耐性がん細胞に対しても細胞障害作用を示すことが明らかとなった。
    • 保温入浴の温熱効果 -介護施設利用高齢者入浴での検討-

      伊藤要子1)、石澤太市2)、髙橋早樹2)、多田井幸揮3)、綱川光男2)

      1一般社団法人HSPプロジェクト研究所、2株式会社バスクリンつくば研究所、3修文大学健康栄養学部管理栄養学科

      【目的】我々は、ヒートショックプロテイン(HSP70)を高めるマイルド加温療法およびHSP入浴法において、温熱効果を高めるために、加温後および入浴後の保温の重要性を提示してきた。介護施設での入浴においては、高齢者のニーズは高まっているにも関わらず、安全性や清浄が主体となり温熱効果がなおざりにされている。今回は、介護施設利用高齢者の入浴において、温熱効果の得られる入浴を検討するため、通常入浴より入浴時間を延長し温かさを保つため、入浴後に保温を取り入れた保温入浴を検討した。 【方法】対象は介護施設で入浴を行う70歳以上の高齢者17名で、A群は通常入浴、B群は入浴時間を3~5分延長し出浴後の安静時に毛布を掛けて保温する保温入浴、C群はB群と同様にし、入浴時に保湿系入浴剤を使用した。入浴は、3群を1日以上空けて、全員が実施した。入浴後は、血圧、入浴温度と時間、体温(入浴前、直後、保温後)を測定し、睡眠感アンケートを実施した。なお、本研究は尾西地区介護サービス事業者連絡会の協力を得て、HSPプロジェクト研究所倫理委員会の承認(201801)を受け実施した。 【結果】A群に比し、入浴時間はB、C群ともに有意に延長し、体温は、B、C群で上昇傾向を認め、保温後はB・C群で有意に体温が高く維持された。血圧は入浴前・後で、A,B,C群ともに有意な変化を認めなかった。睡眠アンケートではB、C群で睡眠状態の改善を認めた。その他、男女差、介護度においても差を認めた。 【考察】我々が確立したマイルド加温療法、HSP入浴法においても保温の有意な温熱維持効果を認めている。今回の介護施設利用高齢者の保温入浴においても、保温後の体温は通常入浴に比し、有意に高値を示し温熱効果が認められ、睡眠のQOLも向上した。また、入浴前・後で血圧の有意な変化を認めず、安全性も示された。よって、日常の高齢者介護入浴において、保温入浴の適応は、安全で容易に実施可能な入浴の改善に繋がると思われた。
  • 一般演題【物理工学】

    • Development of non-invasive temperature measurement system using generative adversarial networks

      柳沢啓斗1),井関祐也2)

      1八戸工業高等専門学校専攻科機械システムデザインコース,2八戸工業高等専門学校機械・医工学コース

      【背景・目的】安全かつ効果的なハイパーサーミア治療には,非侵襲かつリアルタイム的な生体内の温度分布計測が重要である.そこで本研究室では,超音波画像診断装置を応用した温度分布計測手法を提案している.この方法は,組織を伝播する超音波速度の温度依存性を利用したものであり,加温前後の超音波画像上に生じる微小な変位を画像処理により検出して温度分布計測を実行する.しかしながら本温度計測手法は,ユーザーが多くの画像解析パラメーターの中から最適な組み合わせを探し出す必要があり,ユーザーに画像処理の知識や経験を要する.これらの問題点を解決すべく本研究では,敵対的生成ネットワーク(ディープラーニングによる画像生成技術)による温度分布計測システムを提案する.これにより,ユーザーが多岐にわたる組み合わせから最適な画像解析パラメーターを模索することなく,加温前後の超音波画像から簡易的かつ直接的に温度分布を得られるシステムの開発を目指した. 【方法】本研究ではまず,針状電極加温装置に見立てた半田ごてと寒天ファントムを用いて加温実験を行い,加温前後の超音波画像の撮像と熱電対による半田ごて周辺部の温度計測を実施した.その後,加温前後の超音波画像と数値解析的に得られた温度分布画像を組み合わせてデータセットを作成し,ネットワークの学習を行った.最後に,学習済みのネットワークに新規画像を入力して温度分布画像を生成し,その評価を実施した. 【結果】敵対的生成ネットワークを応用することで,加温前後の超音波画像から簡易的かつ直接的に温度分布が得られる可能性があることがわかった.今後は,データセットの拡張やプログラムの修正等を行い,温度分布計測の精度向上を目指す.
    • 小型矩形空胴共振器アプリケータを用いた三次元超音波温度分布計測手法の検討

      林奈々世1)、新藤康弘2)、加藤和夫3)

      1)明治大学大学院理工学研究科 2)東洋大学理工学部 3)明治大学理工学部

      【背景・目的】変形性膝関節症は進行性の変性疾患であり,その患者数は年々増加傾向にある.著者らは,本疾患の治療方法として,小型矩形空胴共振器アプリケータを開発し,その有用性について,コンピュータ・シミュレーション及び実験的検討を通して確認してきた.ここでは,膝関節深部加温時における非侵襲温度計測の確立を目指し,本加温システムを用いた際の温度計測手法を実験的に検討した. 【方法】本研究室において設計・開発した小型矩形空胴共振器アプリケータ(35cm×30cm×20cm),高周波パワーアンプ,被加温体(寒天)移動台,これらに加えて超音波画像診断装置及び手動スライダー等を使用した超音波撮像システムを試作した.まず加温開始前に被加温体(円筒形状寒天ファントム)の複数個所における超音波画像を撮像した後,加温電力30W,加温時間15分での加温を行った.加温終了後,加温前と同一位置における超音波画像を撮像し.これらの加温前後における画像に種々の画像処理を施すことで,撮像面における二次元温度分布計測を実施した. 【結果・結論】撮像した各層における二次元温度分布を重ね合わせることによって被加温体内部の温度分布を三次元的に把握した.この計測結果とコンピュータ・シミュレーション結果との比較から,本提案システムの有用性を明らかにした.
    • 強力集束超音波(HIFU)治療デバイス評価のための広帯域温度可視化用生体模擬ファントムの開発

      高木亮1)、葭仲潔 1)、小関義彦 1)

      産業技術総合研究所 健康医工学研究部門

      【目的】 低侵襲ながん治療法の一つである、強力集束超音波(HIFU:High-Intensity Focused Ultrasound)治療前において、HIFUデバイスの集束超音波出力測定を簡便に、かつ、高速に行うことは、本治療を安全に遂行する上で極めて重要である。従来の出力計測手法の一つとして、温度上昇によってHIFU焦点領域が楕円状に白濁する生体模擬ファントムが提案されている。しかし、本ファントムの課題として、実際の温度上昇がわからないこと、一回使用すると再度利用できないこと(不可逆性)等が挙げられる。そこで、本研究では、感温液晶という、温度上昇によって発色する液晶を封入した透明生体模擬ファントムを作成し、可逆的にHIFU焦点の温度上昇を可視化できる生体模擬ファントムを開発した。また、温度上昇の可視化範囲を増大させるために、異なる感温範囲を持つ2相式ファントムを作成し、従来の2倍の温度可視化範囲を検出できる手法を提案した。 【方法】 生体模擬ファントムの主材料は、透明性、温度耐久性を持つウレタン材料とした。感温液晶として、45-55℃と55-65℃の10℃の感温範囲を持つ、それぞれの液晶をウレタン材料との重量比0.005%で封入した。1層目(下相)には低温度帯、2層目(上相)には高温度帯の生体模擬ファントムを作成した。ここで、HIFUデバイスは、HIFU焦点が1層目と2層目の境界面にくるように設置した。HIFU焦点の温度上昇により、低温度帯から発色し、その後、高温度帯が発色することを想定し、HIFU音場の照射軸に対する線対称性を利用することで、従来の2倍の温度範囲(45-65℃)を可視化した。生体模擬ファントムを脱気水槽中に設置し、口径46㎜、Fナンバー1、共振周波数1.7MHzの凹面型振動子を用いてHIFUを照射した。音響パワーは、2.5Wで、30秒間照射した。 【結果】 本手法により、HIFU焦点における温度上昇を従来の感温範囲の2倍(20℃幅)の範囲で可視化することに成功した。数値シミュレーションと実験による温度分布を比較しても、ほぼ一致したことから、本ファントムによる温度分布が比較的、正確であることが示された。また、複数回照射することでも再現性よく温度上昇が可視化できたことから、可逆性という観点から、実用的にも有用であることが示された。 【結語】 HIFU治療前におけるデバイス出力計測において、簡便に、かつ、高速に温度上昇を可視化できる生体模擬ファントム、および、計測手法を提案した。本手法は、HIFUデバイスのみならず、ハイパーサーミア機器を含む、様々な温熱デバイスにおいても有用な手法であると考えられる。
    • Deep Learningによる生体内温度推定システムの開発

      森健太郎1) 、廣田千寿瑠2)、矢野立樹1)、大橋未郷1)、丹下裕1)

      1 舞鶴工業高等専門学校電気情報工学科、2 舞鶴工業高等専門学校専攻科総合システム工学専攻

      【背景】近年では、国内においても日本人の2人に1人はがんと診断され、誰もが罹患する可能性がある。近年、患者への身体的負担が小さいがん温熱治療が注目されている。がん温熱治療法とは、がん細胞と正常細胞の熱感受性の相違に着目した治療法である。温熱治療をするためには、選択加温を実現する装置と生体内温度を簡単に推定できる非侵襲温度計測法の開発が必要となる。 【目的】本研究室では、これまでに選択加温を実現する装置の開発を進めてきた。がん温熱治療法の治療効果を左右する非侵襲温度計測法の開発も重要な課題であり、本研究では機械学習を導入することで新たな温度推定法を提案する。 【方法】擬似生体(寒天ファントム)を作成する。機械学習の可能性を探るため、表面に加熱源を置いた際の表面温度と測定位置の相関関係を調査する。擬似生体の形状は、10㎝角の直方体とする。実験データから得られた温度分布と測定位置の関係を機械学習させ、まずは擬似生体深部の1点を推定する温度推定システムを制作する。実験をすることで、温度推定システムの精度を調査する。 【成果】  寒天ファントムの表面温度と深部温度の相関関係を調べるために基礎実験を行った。実験で使用した寒天ファントムは、『ハイパーサーミア装置の操作ガイドI-RF容量結合型加温法-5)』に記載されているものを参考に作成した。実験前日には、寒天ファントムの内部温度を一定にするため、実験室に12時間以上置き、エアコンにより温度を調整した。実験では、寒天ファントム表面と外気の温度のやりとりを無くすため、断熱材(発泡スチロール)で四方を囲んだ。実験では、寒天ファントム上部に熱源(ホッカイロ)を置き、針状K型熱電対をホッカイロと寒天ファントム表面の間、寒天ファントム中央深部(表面から1cm,2cm,3cm)に取り付け、10s間隔で温度を計測した。また、基礎実験の妥当性を検討するために、数値解析で再現することを行った。本研究では、3次元熱伝導方程式に差分法(陽解法)を適用した。測定結果と数値解析の結果は、寒天ファントムを断熱材で四方を囲んだことによりほぼ一致した。また、表面温度と深部温度(d=1cm,2cm,3cm)の相関関係も確認できた。相関係数は、それぞれ0.993、0.997、0.994となり、表面温度と深部温度の相関関係がある。実際の生体では、組織の複雑さや血流の影響もあるため、相関関係があっても正しい値が求められるとは限らない。したがって、機械学習を導入することで表面温度から深部温度の推定を試みた。  温度推定では、8回分の基礎実験の測定結果を利用して、表面温度から深部温度の推定を行うDeep Learningモデルの構築を行った。モデルはLSTMネットワークを利用しており、100ステップ分の表面温度から101ステップ目における深部温度を推定する。8回分の測定結果のうち、7回分を学習データ、1回分を試験データとして交差検証を行った結果、表面から1cmの深部温度推定における平均誤差が約0.8度であることが確認できた。基礎実験と温度推定による温度分布より、深部温度の推定を行うことができた。しかし、温度推定におけるデータセットが8回分しかないため、モデルが過学習している様子が確認できた。今後は、データセットの増加と推測モデルの検討を行う必要がある。
    • RF誘電加温治療時における術者への電磁界影響解析

      梁晨1), 新藤康弘2)

      1 東洋大学大学院理工学研究科機能システム専攻、2 東洋大学理工学部機械工学科

      研究背景: ハイパーサーミア治療における平行平板RF誘電加温方式において、治療中に術者が患者へ接触した状態や、点滴器具を付けた状態で加温することがある。この様な特殊な状態において、患者のみならず、術者の体内への高周波電流の流入や加温分布特性への影響に関して数値的に解明する必要がある。 そこで本研究では、簡易型人体モデルを用いて、上記のような様々なシチュエーションにおける電磁界分布解析を実行し、術者の体内へ高周波電流に関して数値的検討を実施した。なお、本解析ではFDTD法解析ソフトSim4Life™を用いて準定常状態における電磁界分布解析を実施した。 方法: 本研究では、電磁界分布解析を行うためにFDTD法を用いて、出力8MHzの周波数帯で術者が患者に触る時の電磁界分布を数値的に求めた。具体的には、術者が患者の手、脚、肩を触る際に術者が接地している場合と、術者が安全靴などをはいて接地していない場合とでそれぞれの違いについて解析を行った。また、患者が点滴器具を付けた状態を想定した解析についても行った。 結果・考察: RF誘電加温方式治療時、術者が患者に触った際の、術者への高周波電流の流入があることが数値的に確認された。実際に治療を行う医療従事者は電磁波曝露を受けてしまっている可能性のあることが数値的に確認できた。具体的には、患者に触る時に術者の頭頂部やつま先、触った腕の脇の部分などでSAR値が高くなることが確認できた。また、点滴器具を付けた状態では、人体と点滴チューブとの接触部の電界強度が部分的に高くなる可能性が確認できた。今後も引き続き検討を行い、様々な状況下における注意喚起のエビデンスデータを得たいと考えいる。


  • 山本ビニター
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